逃避行日誌 5
結婚したのだからと言って手は出してません。
恐らく怒られないのでしょう。
でも肘打ちが決まったのもあり怖いです。
それは冗談にしても突然すぎますしね。
朝になってシャロは一足先にギルドへと帰りました。
今日は仕事しようと思ってます。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
冒険者組合の仕事は自分で選ぶ場合と斡旋される場合がある。
基本的に受注は自己判断ではあるがランクなどで可能な受注内容も制限されているのは当然だが、依頼によっては個人でも可能だったりPT推奨などといった具合で細かく分類されており、場合によっては組合側が受付を拒否する場合もある。
改めてB10ランクと認められているジンではあるが個人として受注できる仕事は通常ならば少ない。
大よそBランクの依頼と言えば通常ではPT推奨なのが普通であり、個人での依頼受注はCランクまでとなるから当然の話。
そもそも、個人でBランクに足を掛ける事こそ異例である。
依頼掲示板を眺めながらジンは受けても問題がなさそうなモノを選ぶ。
選考の基準は、受注期間が迫っている、個人で可能な内容、他人が関わりたがらない、値段は考慮に入れない、ランクは不問となっていて組合からは受けがいい。
実際の所は、受注期間が迫っていれば個人でも拒否されにくく、他人が居なければ魔法でもなんでも使いたい放題で値段は依頼さえ大量にこなせば問題にもならない、そしてランクに拘ればオマンマの食い上げである。
辺境の村だけあって依頼は採取や狩猟などが中心で優秀な冒険者も多いのかジンが普段受けるような『人が受けないような』依頼が残っていない。
シャロの事は未だによく判っていないが、この組合の受注状況を見ただけでその腕前の程は判ったジンは関心しながら適当な依頼を受けようとした。
「ジン・ストラット様」
依頼書を剥がそうかと指先をかけた所に受付からのお呼び出しが掛かった。
「はいよー」
気軽に返事を返しているが、何か問題があったか、若しくは可能性があるのかと内心では溜息を吐いた。
「申し訳ありません、現在上級の冒険者が殆ど出払っていまして」
「まあ、あれだけ依頼内容がしっかりこなされてるのを見ればね」
呼び出したのはSランク受付嬢のメイである。どうも事務的というか硬い印象があり声も変化が見られない。やはり受付嬢って人を見る眼が冷たいなぁなどと裏事情を知らないジンは悲しいと感じていた。
「それで、どうしたんだ」
「はい、実は先日お話しました件で調査に出ている冒険者が未帰還となっておりまして、昨日の夜までに戻る予定が未だ帰還しておりませんのでご協力をお願いしたく」
「じゃあ詳しく資料をくれないか、いくらなんでもこの区域はまだ着たばかりだ」
オークの調査に出た冒険者のランクはCランクの集まりのPTで3人。
街道を北に進んで調査の予定であり森の中での調査予定。
依頼はギルドからの指名だった為に未熟な者は送り込んでいない。
森林斥候光輝人男性C2、剣士人族男性C3、魔術士人族女性C3の構成。
目撃情報はD4の冒険者によって5日前に報告があった。
調査内容としてはオークの集落ができていないか、兆候などはないかをB1ランクエリア手前までの調査予定。
この情報に目撃地点が記された地図と特別依頼書がジンに示された。
「出来ればお引き受け下さい」
「なんだ、知り合いか」
「知り合いでもありますが……」
「まあいいか、食料と水、それに医療セットと魔法治療薬を用意してくれ」
「では」
顔を上げるメイだがジンはそんな事よりも時間が無いと急がせた。組合には其れなりの薬品や食料が用意されている、慣れない村で自分で用意するよりも確実な方法を選んだ。
「一応、3日だ、何かあろうが無かろうが、3日で一旦情報を持ち帰るなりする」
「了解しました、宜しくお願いします」
またシャロの話を聞きそびれたと思いながらジンは荷物を袋に詰め込み森へと駆け出した。