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逃避行日誌 3

「気持ちのいい朝だ、あーたーらしい爽やかなあさーだよー」


 この世界に小説にあるような生活レベルの差は余り無い。

 科学の代わりとなる魔法があるからだ。しかも、エネルギー等の諸問題も無い点を考えれば利便性が地球の文明より高く、環境にも優しかったりする。

 歴史的な観点から見て中世レベルの文化に、近代レベルの田舎暮らしといった風情が楽しめる。


 高層ビルが無いヨーロッパの便利な田舎の都市といったら判りやすいだろうか。


 飛行機の代わりに飛竜が空を舞ったり、人が空を飛んでいたりするだけの魔法があるのだから当然だろう。さらに魔石文化によって魔石が魔法道具の動力源になっており生活に多用されている。


 流石に宇宙開発までは行われていないが、代わりに魚人族がいたり、魔法の力がある為に海洋開発などは段違いで進んでいたりする。


 不思議世界(ファンタジー)ならではの苦労といえば魔物退治とダンジョンからの魔物大活性化などの問題を除いていけば種族問題が人の髪や肌では無い事ぐらいか。


 後は旅に少々時間が掛かるのは一部を除いて当然であって、それこそスローライフである事を考えれば普通である。


 一部輸送手段として竜車や開発が進みつつある魔石車など高額になっても良ければ高速で旅をする手段も存在する、個人ならば然程町から町への移動などで苦労はしない。


 転移装置もある。そう考えれば魔法文明だからこそ科学文明よりも優れた部分は存在する。とはいえ存在しても転移距離の限界や管理問題でそれ程多く設置されていないし、同盟国同士でも転移門の装置は共有されていなかったりする場合の方が圧倒的に多いのだが。これは日本という国が平和であるだけで世界の状態をみれば然程不思議ではない。国同士の関係などを考えれば致し方ないのだろう。


 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆


 朝ごはんを食べ終わったジンは身だしなみを整えて試験を受ける為にと組合(ギルド)へと向かった。


 そして試験の手続きを行った旨を告げて訓練場へと足を伸ばして……固まった、いや困惑した。


「何が如何して、こうなってんの?」


 昨日の話では試験官は男性という話だった筈、なのに何故目の前に居るのがロリなんだろう。


 人は見かけで判断してはいけないという考えはあるが、目の前に居るのはどう見てもロリである、『まさか!? ロリババア?』なんて一瞬だけ思考に上っても雰囲気で発言は控えていたので命の危機は訪れていない。


「試験を受けに来たんじゃろ?」


 ちなみに、目の前のロリの後ろには昨日の美人受付嬢もいるのが視界に映っている。『うむ可愛い流石S級輝いてる』と関心するが、更に横をみれば男か女か迷うような剣士がいた、どうも男っぽい、本能的に男だと思うだけで顔だけみたら超美人なのだが、そういった嗅覚には自信がある(無駄な能力では決して無い)ジンの感は外れない。


「あの、失礼ですが後ろの方が試験官の男性では?」


 恐る恐る尋ねてみる。再度容姿を確認して、まさか、ロリショタが試験官なんて事はないよねと思いたい。いくら平原でも女性でっ!?


「失礼な事を考えたじゃろ?」

「いえいえいえいえいえいえいえ」


 真剣に考察した瞬間に思考を読み取られたかの如くジロっと睨まれた。危険を察知して緊急回避、それしかジンに手段はなかった。


「本当かのうー、怪しいのぉー」

「本当ですよ?」

「まあいいじゃろ、本当は後ろのスカイが担当じゃったが、妾みずからが実力を測ってやろうというのじゃ。美女に相手してもらえて嬉しいじゃろ」


 先に主導権を握られてしまった事を後悔したい、出来るならやり直したいと願うジンだがそんな事は出来そうに無い。

 余りにも剣呑過ぎて、美女云々にも最早何も考えまいと一瞬にて心に誓いつつこの試験を諦めようと達観した。


「まあ、美少女の方に相手をしてもらうのは大変名誉なんですが……できれば男性の方が……」

「わかっておらんのぉ、スカイはランクA9で確かに腕が立つ。B10への試験官ならば確実に問題はあるまいよ。じゃがの、お主の実力を支部長である妾が直接視ると言うておるんじゃ。出し惜しみなんぞする暇は与えんぞ?」


 カッカッカと何処かのご隠居様のような朗らかな笑い声。美少女ボイスによって耳朶をつく気持ちのいい笑い声と真逆の恐ろしい宣言だった。これはシャロがプレッシャーを与えて本当の実力をださないと承知しないぞと脅しているようなものだった。後手に回ったジンに逃れる術は無さそうだが、どうせ組合(ギルド)ってある程度把握してんだろうにと投げやりになってしまった。


 手を抜くなって言われてもなあ。


 自分人外ですし?


 そう思うのがジンの正直な感想である。


「えーっと、出来ればその、二人きりなら構いませんが」


 勿論これは二人きりになりたいからではない。能ある鷹はという意味合いで手の内は可能な限り他人に見せたく無いと言ったのだが……


「ふ、二人っきりじゃと!?ふむ、まあ仕方あるまい……」


 ここで全然違う方向に捕らえた人がいたのは計算外。ジンの責任ではない。

 この時点で訂正をしていたならば微妙な勘違いで済まされる可能性は残されていた。


 更に続く「それじゃ宜しくお願いします」と言った一言を「それじゃ(今後とも僕の事を)宜しくお願いします(結婚前提に)」といった風に曲解がなされたのもジンに罪はない。


「仕方がないの、スカイの(武術の)勉強にもなるかともおもったし、メイにも良い(縁談の)機会かと思ったのじゃが、暫くの間立ち入り禁止じゃ」


 支部長の鶴の一声で決まってしまっては仕方がないと、試験官であったスカイとメイは訓練場の出口へと向かった。


 少々メイが怪訝な顔をしていたのは何か変だと気がついていたからかも知れない、彼女が止めれば喜劇でも無かったかもしれない。


「さて、妾の名前を……(婿殿に)名乗ってなかったのじゃ、妾はシャロと申す、……(末永く)宜しく頼むのじゃ」

「C1冒険者のジンだ、此方こそ支部長さんが相手になってくれるなんて光栄だ、宜しく頼む」


 『相手』が『結婚相手』とか『結婚してくれて光栄だ』と変換されているなんて言うまでも無かろう。


 更にいえば既にシャロの茹ったお子様恋愛脳内では「俺の実力を見せるから了解しろよ」などという一切話してもいないセリフまで捏造されている。


 噛み合ってはいけない歯車が時折かみ合ってしまったり、混ぜてはいけない薬品が混ざって猛毒を発生したり、伝言ゲームが最初と最後で大きく違うのに何故か意味の通じる内容だったりと、世界ではこれぐらいの不思議は起こりえる。


 小声でテレながらの部分が正確に伝わっていれば在り得ないレベルでの話しだたのだが……。


「それでなんだが、支部長には「シャロじゃ」へ?」

「じゃから、妾の名じゃ、支部長ではなくシャロと呼ぶのじゃ」


 頬を膨らませて抗議されれば致し方がない。なんだこの可愛い生き物とジンが思ったのも良くない。


「判った、シャロさん、「さんも要らぬ」じゃあ、シャロ」

「うむ、よきことじゃ」


 話が進まんなと思いながらも本人が呼び捨てにして良いと言ってるんだしいいよなと続け、これ以上ない笑顔だし悪くないな等と暢気なジン。


 阿保であった。


「シャロには恐らく隠し事が不可能だろうと推測したんで、ある程度の力を見せるが、出来ればこれは二人の秘密として欲しい」

「うむ、構わんぞ二人の秘密じゃな」


 シャロは完全に有頂天になっており、全てが幼児恋愛能変換されており前半など吹っ飛ばして『二人の秘密』という一言のみが脳内で留まった。結果、前半は「俺はシャロには隠し事が出来ないのさ」と何処かの二枚目俳優かっと思われるセリフに変換されているので更に効果があった。


「直接打ち込んだりすると危険だから、あの的に攻撃するよ、先ず魔法からだ」

「ふむ、この妾に魔法を見せるとは楽しみじゃの」


 いくら婿殿とて古光輝人(ハイアルーヴ)に魔法とはと思ったシャロ。まあ普通に考えれば魔法が得意な光輝人(アルーヴ)の更に上をいく種族に魔法を見せると宣言しているのだから失笑物になっても仕方がない。


「まあ、訓練所だから初級クラスの魔法で簡便してくれ」

「初級?」


 ジンはやろうと思えば初級クラスの魔法を上級クラスの威力にできる。

 それも宮廷魔導師達でも数少ない無詠唱で可能なのだから知らないシャロが疑問に思うのも無理はない。


 実際にジンが使える魔法の殆どが、何故か(理由は明白だが)未だに中級クラスと分類される物ばかりである。まあ、オリジナル魔法はそれに限らないが不必要な物まで見せる気はなかった。


 通常の火弾の魔法、その数倍の大きさになった物を的に目掛けて発動させる。これを無詠唱でやったのだから見る物が見れば魔法使いや魔導師と思うだろう。しかしジンは剣士の姿なのだ。


 バシュンという音と共に的が燃え尽きた。初級魔法である事は魔法の形状で判断が可能だが威力も効果も桁違いである。ジンからすればパフォーマンス用の魔法に過ぎないのだけれど……個人でならもっと圧縮し熱量も増やし数も複数で自動追尾など当たり前なのであった。


「んで、接近戦闘の能力な?」と言った瞬間に姿が掻き消えるように移動したジンが的を切断していた。


「まあ、こんな感じなんだが、シャロどうした、おーい」

「……なんじゃ、なんじゃとー!?」

「うわぁ、急に大声を上げるなよびっくりしたぞ」

「ジン、何をやった?」

「無詠唱で魔法の発動と威力は5倍ってとこか、まあ中級クラスの魔力は込めたからな。別々に同時発動するか迷ったんだが的がもったいないだろ? それと肉体強化の魔法と移動魔法の混合でさくっと斬撃しただけだよ。正直人相手に使うもんじゃないし、魔物討伐ぐらいじゃねーと使えない無駄な技だよなぁ、アハハ」


 『この男何を平然と抜かしておるのか』それがシャロの旦那様(妄想)に対する評価だった。


 少なくとも彼女はジンを初代の英雄以上の実力、すなわちS1ランク以上はある確信した。


 なにせ、この旦那様(シャロ視点)はどう見ても余裕であり訓練場だからという制限がついているような事を述べていた。つまり大規模魔法や乱戦用の戦闘術もあると言う事。正解ではないが間違いでもない解答に行き着いたシャロもまた実力者という事である。


「流石ジンじゃな、妾も嬉しい」

「お、そうか、意外に好評価で良かったよ」(シャロに気に入ってもらえて良かったと変換されているのは当然である)

「では()()(結婚相手に相応しい力、シャロ視点)もみせてもらったしの、早速儀式じゃな」


 儀式、Bクラスともなればそんな儀式があるのかとジンも不思議には思ったが、まあ仕来りならば致し方無いと受け入れた。


「我古光輝人(ハイアルーヴ)此処に誓い誓約を宣言する我魂に此者の魂を結番とし祖霊に報告す」


 自動翻訳される筈がなぜか上手く翻訳されないのは祝詞だからか……そんな風に思いながらジンは儀式を見守った。


 不思議な言葉と魔力の流れ、魔素(エーテル)が粒子となって煌き二つの輝きとなってシャロとジンを包みながら徐々に二人の頭の上の僅か横に結実していく。


 耳に微かな痛みを共い光は消え去った。


 と見ればシャロの耳も何故・・か輝いている。


「これで妾とジンは夫婦じゃな! ジン」

「え?えぇ!?」


 ジンの絶叫はシャロに歓喜の声と認識されていた……。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 ちょっと突然でびっくりしてますが、起こった事を正確に書き残そうと思います何が何だか判らないでしょうが事実です。

 昇格試験にでかけました。

 ヌルムの町での実質活動一日目、頑張っていこうと思う。

 新しい出会いがあればいいな。

 なんて思ってました。

 何故か知らないけど結婚してました。

 あれ、なにがどうしたんだろう。

 結婚の申し込みとかしたっけ?

 ともかく下手は言えないけど聞いたら魂の結びつける古い古い仕来たりだとか。

 一生外れない婚約指輪みたいなもんだってさ。アハハハ。

 結婚は出来たんですが、なんだか腑に落ちません女神様。

 だって嬉しそうだったんですよ。

 それに聞いたときにちょっと心配してそうな顔だったし。

 うん。

 ちょっと考えようと思います。

 まあまさかの結婚相手が古光輝人(ハイアルーヴ)の人になるなんて……。

 大丈夫だよね刺されないよね、聞いたら一夫多妻だってバンザーイ。

 うん、ヤンデレでさえなければうん。

 今日のところはシャロも忙しいと言っていたので、詳しい事は明日教えてくれるらしい。

 あ、B10試験は合格してました。この町にいるかぎりSクラスまで実際の試験は免除してくれるんだそうです。

 女神様、そういうわけで結婚しました、転生に今日も感謝を。

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