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逃避行日誌 1

「ありがとう冒険者さん、安心して結婚できるわ」

「これで彼と安心して旅に出られるの、感謝してるわ冒険者さん」

「助けてくれて有難う冒険者さん、町に夫がいるのだけどお礼をさせて?」

「魔物も退治できたし領地も安泰だ、安心して新婚旅行にいけるわ」


 ――サラ、ターシャ、ミランダ夫人、レイラ女爵、等々と過ぎ去りし過去よ!


 ケーセラ~セラ~♪


 暢気だなって? 今を除いて何時歌うっての……――


 自業自得という格言に触れない事もまた優しさか……

 ジンは此れまでに知り合った女性達の事を思い出しながら旅路を進む。


「良い女性(ひと)ばかりだった、よな……」


 思い返しても、誰一人ジンの事を名前で呼ばず『冒険者さん』と言っていたからご推察頂けるだろう。

 多くは語るまい、お察しの如くであり、深く触れぬが武士の情けなりけり。

 だが、ジンの名誉の為に述べておきたいのだが彼は不誠実ではない。恒例行事のように人妻か恋人のいる女性ばかりが相手になるが、発覚するまでジンは知らなかった事で、今度こそはと本人なりに真剣だった事と、一つの恋の話だった事は述べておこう。


 擁護は出来ても所詮は全てが『横恋慕に気づいて逃避行』という話、出会いは突然だったり必然だったが、恋する相手が何故か恋人かもしくは旦那が居たという無様な話。


 不思議な事にジンとしても、利用されたのでもなく、結果として利用されてしまったと言えばお分かり頂けるだろう。ジンという男を評するなら、色恋に関して『惚れっぽくてお人好し』付け加えて『思い込みが激しく思慮深くない』と来たもんで『無駄に腕が立つ』し『頭は良いのに反省しない』という三拍子も四拍子も揃った馬鹿である。



 今回()とある女性を助ける為にと大立ち回りを演じたまでは良かったけれど、結果はいつもの状況でしたという始末。助けた女性には婚約者が居ましたと判ってしまえば居た堪れなくなるのは当然で、感謝されるなんて小恥ずかしいと碌に準備も整えずさっさと町から逃げだして街道へと向かう途中であった。


 出立に際して毎回やるので、決まり事でもないのに一種の儀礼の如く、ジンは棚引く黒染のマントを翻し、布地で顔を覆って人目を憚りながらと旅に出た。



 ――またかよ! どーなってんだよ俺の恋愛運、可笑しいよなこの加護!?――


 他人の所為ならぬ神様の所為にしてるが殆どが自業自得が原因だった。

 今更かと思うがジンは『恋愛事にのみうだつの上がらない』冒険者。

 そして彼の心の叫びの通り『加護』を授かっている『転生者』だった。


 何故に彼が吼えているのかは単純明解、己の授かっている加護についての不満が一時的に爆発したのだ。加護なんて持ってる人間が圧倒的に少ない事だし基本かれも何時もは感謝しかしてないのだが……もしも彼の持つ加護を見る事が可能な人がいれば「ああ、確かに……不憫だな」と納得の上で同情までして貰えること間違いないだろう。


 加護の名称が【愛の女神の加護】だから……。


 だが、他人の加護などは一切見る事が出来ないので誰も理解してくれる人など一生現れないのだが。




 この【愛の女神の加護】も含めて『転生者は漏れなくチートである』という法則はジンにも適応されている。


 『恋人の過去に絶望』したり『騙されたり』と散々な目にあった上に『ヤンデレに捕まった挙句に刺されて死亡』という、ちょっと泣いてもいいのよ? レベルの一生を終えた(ジン)は愛の女神によって転生させてもらえたらしい。らしいというのは会った事もお告げを聞いた事もないからジンの推測となる。


「できれば死亡の前に加護が欲しかったんだけど」と思いながらも神様にも事情があるんだろうと納得していた聞き分けの良すぎる男だ。


 ここで少しジンの過去に触れよう……古傷を抉るようで申し訳ないがこれも役目だ。


 記憶を持って転生させてもらったジンはそれなりの貴族の一家に生まれ変わった。それが何故に冒険者になっていて、現在の所在地が辺境への一本道の途中なのか……


 簡単に言えば恋に破れての逃避行の末である。一から十まで恋愛がらみで呪いかと疑いたくなるレベルだった。


 最初は幼馴染で美人のリリー。


 名前の通り百合の似合う少女にジンは惚れていたし相思相愛だと思っていた。

 しかし、その幼馴染が国の皇太子との婚約が決まり、喜ぶ笑顔を見てしまって絶望に打ちのめされてしまった事が切欠だった。


 ――変だよ、将来結婚しようと言ってたのに……――


 前世を思い出す苦しみからか、ジンは無意識に逃げ出していた。

 それなりの武術に関する教育を受けていた上に転生者のチートを持つジンが冒険者を生きる方法に選んだのは流れとしては悪くなかった。

 自暴自棄にしては元来の性格の為か楽天的な道を選んだといえる。




 そんな逃避行の筈が、どうしてこうなったのかは冒頭の通りだ。不幸な事にジンが好みとする女性は、悉く恋愛中だったり他人の妻だったりするのである。狙っているのではないから余計に不幸だった。


 一言、ジンを擁護する言葉があるとすれば『恋する女性は美しい』という事だ、『幸せを感じている女性の美は5割増しだったbyジン』だなと言う事である、恋に恋しているのでは無いところがジンの不運だろうか。


 決して判ってて惚れたりしたのではない事だけはジンの名誉の為に強く述べておきたい、恥ずかしくて逃げているのだからご理解頂けるだろうか。


 恋人がいるかどうかで人助けを躊躇うジンではないが、幸せな笑顔を見ればリリーの事を思い出す、そして逃げるという悪循環。知らずに助けて可愛いなと思ったら恋人がいるとか旦那さんがいるなど当たり前。


 数え切れない感謝の数と同じだけジンは逃げ出している。いっその事、関係のない仕事をしようが何をしようが何故だか知らないが、最終的には同じような結末が待っているので最近はもう諦めていた。


 だが逃げ出す事は辞められない。心が苦しいからだ。


 あれか、この人生は呪いだったのか! と何度もジンも思った。だが紛いなりにも転生までさせてくれた(推定)愛の女神がそんな事をする必要性など無いだろうと考え、最終的に単に自分の運が悪いだけだろうと考えている。


 可也の、いや、呆れる程のお人好しなジンだった。


 唯一の救いと言って良いのか判らないが、加護に関してだけは真っ当であるし、普段から能力値10倍などという桁外れの内容だった。


【愛の女神の加護】

 愛を司る女神が愛する者へ与えた祝福。

 女神の加護によって其の身は守られている。

 能力値10倍、但し愛に関する事ならば祝福の力によって守護者の能力を発揮する事が可能。


 ※守護者の能力:一時的に神徒の能力の全開放。肉体の破損修復、ステータス異常の回復、恋愛力に比例しての能力の開放並びに魔力値に変換、能力値を恋愛力×10倍に変更。


 事と次第によっては『魔王』なんて存在がいても倒せそうな加護であり正にチートだった。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆


「俺ってば現在進行形で機嫌が悪いんだ、逃げるなら早めにしろよ?」

「ギャハハハハ!」「聞いたか『逃げるなら早めにしろ』だってよ」「身包み剥がしてやるぜ」


 どうして次の町へ向かいたいだけなのに、目の前で馬車が襲われていて盗賊なんかが出てくるのか。現在失恋中で人と関わりたくないのに非常にもって鬱陶しい。


「3「まぁ助けて下さいってなら」2「許してやるけど、金目のモノは置いてけよ」1「その金額次第だけどなぁ」0だ」


 もしかしたらジンの機嫌さえよければ盗賊たちは捕獲だけで済んだかも知れない。だが失恋中につき八つ当たりの的となってしまった彼等は次の瞬間に眉間を魔法で打ち抜かれて死亡していた。


「あ、有難う御座います」


 そして馬車から出てくる美少女という名の最も現在ジンが関わりたくない相手。流石のジンも逃亡中だけあって無反応だった。


「ああ、構わないんだ(八つ当たりだし)」


 仕方がないと逃げ出した町へ一旦引き返し送り届けたジンはお礼をしたいと言ってくる美少女を相手にせず一目散で街道を進む。


 その少女の恋心を振り払っている事にも気が付かないで……。


 どこかで誰かが溜息をつきたい程のタイミングの悪さと馬鹿っぷりだった。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 そして一人寂しく街道を行くジン……もう恋なんてしないなんて言わないけれど傷心はブロークンだなどと自らの馬鹿さを棚に上げて進んでいた。


「ステータスでも確認しようか……最近見てなかったし、あー無駄にスペックが高い」などと呟いていた。


 冒険者組合(ギルド)のカードに記載されている内容は次の通りである。


 名前 :ジン・ストラット 

 所属 :冒険者組合

 ランク:C1

 賞罰 :無

 受注 :無


 冒険者組合のギルドの保管している魔水晶データベースならば更に細かく年齢や種族などや、これまでの受注暦など詳細が書かれているし組合(ギルド)に保管してある金銭に関しても管理してくれている。表示されている内容は旅に必要な身分証であって全てでは無いのは当たり前。


 自分の持つスキルにしろ年齢種族といった情報は必要にならない限り表示する責任も義務も無い。そして賞罰などは魂を読み取る事で取り出した情報だが殆どの情報は自己申告であった。


 ステータスを確認するような魔法は存在するのだが、その魔法というのは相手の体力値や状態などを見る事ができるだけである。だが、ジンが使うのは特殊なスキルで、彼が確認しようかと言えばこの方法になり、本人以外も詳細まで見れる。


 結果としては、このような物まで見る事が可能だった。


 種族  :神徒

 魔力値 :49205×10

 肉体強度:35020×10

 恋愛力 :51490

 加護  :【愛の女神の加護】

 スキル :剣術5×10 格闘術4×10 投擲術2×10 仕掛術3×10 元素魔法5×10 熱量魔法4×10 力量魔法8×10 形成魔法4×10 源力魔法3×10 生命魔法5×10 次元魔法6×10 

 特殊  :擬似魔法 

 派生  :鑑定 アイテムボックス 状態異常体性 並列思考 思考加速 肉体強化


 自身だけでなく触れられる物は勿論の事離れていても簡易な内容は見る事が出来る。実際はこれより細かく無駄な表示もあるのだがジンは使っていない。よくある筋力値というのも部位事や総合筋力値なんて表示があったが表示していてもいなくても関係が無い。


 10倍の恩恵もあるが、ポイントで増えるなんていうところまでゲームな世界ではなかったからだ。基本的に全部は自分の努力が元。魔物を倒したら魔物から魔素(エーテル)を吸収して強くなるというのもジワジワと上がる方法で何処からか音楽やファンファーレが響くなんて事はなかった。


 ただ加護のお陰で習得した技術に関しては世界を基準にしても高いレベルになる。これまで見た最高値が8だったからもである。ジンは1になれば10相当の技術能力だけは確保できるのだからチート以外の何でもなかった。

 そして、もう一つ加護以外に受け取ったのが【擬似魔法】で大抵の事は便利に出来てしまう、派生となっている思考加速や並列思考などは全てこの魔法で作られたモノだった。


 守る対象(相思相愛に限らない)がいれば魔王どころか邪神だって怖くないぜ、なんて思っても虚しいが事実だろう。C1ランクの冒険者としては大言壮語だと言われても、実際F10~S1までのランクなどと言うのはこの世界の組合(ギルド)の中での基準でしかない。


 ジンは実力だけなら世界最強の一角だろう。


 では何故、実力があるのに関わらずC1ランク止まりなのか。理由はまたしてもお分かりだろう、逃避行を続けているからである。今回もBランクになる試験を受ける予定だったが、失恋と云う名の精神攻撃からダメージを受けて予定が狂ったのだが、そんな事はジンにとって日常茶飯事だった。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 道を歩けば町へと辿り着くのもまた定と云うもので、ジンは次の町へと辿り着いた。


 運命が待ち受けているとも知らず……。


 門番に組合(ギルド)カードを見せて入れば冒険者は基本無料である。依頼で荷物の輸送などしていなければ問題ない。町や都市ならば確実に組合(ギルド)は存在するし、無いような村ならば村長が簡易権限をもっていて保障されている。


 冒険者は国や土地に縛られない自由民として認識されている、同時に魔物を倒す戦力であり、貴重な魔石やアイテムを収集してくる人材。組合が国と交渉して保障されている。扱いは個別に勢力を争う商人や傭兵の組合に比べ格段の差があるのも当然だろう。


 長年の研究によって魔物=魔素(エーテル)の集合体もしくは魔素(エーテル)を取り込んだ動植物という結果と共に魔法や魔術に消費された魔力や魔石は拡散して魔素(エーテル)へと戻る事が発表された。

 つまり、魔素(エーテル)がある限り魔物は生まれ続ける、そして魔石消費文明とも言えるこの世界において文化が栄える限り永遠に魔物の襲撃もまた止まらない。自然界で迷宮魔石ダンジョンコアや成長途中の物が発掘される事から魔物がいなくなるとは考えられない、故に冒険者は人々の生活に密接に関わっている。


 国としては抱え込みたい所だが、魔物と戦いはリスクが大きく保障の問題などの発生も考慮した結果、冒険者組合の提案を呑んだ方が有利に働くという結論に至ったのだ。

 実際にその決断を誤り国が疲弊してしまったという歴史が証明している為、自由民の冒険者は行動の自由を冒険者組合(ギルド)が定める規定意外には犯されない。



 そういう訳でお金を払う必要もなく審査も比較的緩やかに村へと入ったジンだった。


 先ず、村に着いたら必ず冒険者組合(ギルド)へ顔を出す。これは組合(ギルド)の決めている数少ない規則である。


 罰則は伴わないが互いにメリットのある約束事で、組合(ギルド)を通じて情報や連絡も受ける事が冒険者には可能となり、組合(ギルド)は其のときの戦力を正確に把握したり優秀な冒険者が必要な土地へと向かってもらうなどといった事が可能になるから双方に利益となる。


「ちわー、お邪魔するよ」

「ようこそ、ヌルムの冒険者組合(ギルド)へ、到着のご報告でしょうか」


 なかなか優秀な受付嬢だとジンは感心した、この受け答えは町の冒険者を把握していないと出来ない。


「うん、まあ暫くは居たい、場合によっては一生でも構わない」


 懲りない奴だと云われてもギルドの受付の美人率は何故か高い、其の例に漏れずヌルムの冒険者ギルドの受付嬢もSランクだった。仕事も出来てその上にSランクとは! 誰でも喜んで指名依頼をこなしそうである。

 どうせ受付してもらうなら美人の前に立つのは男ととして当然の選択だ。失恋の痛手には新しい恋だよね! などと単純なジンは考える。

 まあ単純だが底抜けの馬鹿でも無い(自己評価)のでギルド職員に手は出さないと決めている(手痛い経験による)ジンなのだが。


「では、まずカードを」


 ジンの一言などなかったように事務的に受け答えをする笑顔な受付嬢。笑顔なだけに居た堪れなくなるという事を良く知りぬいた対応であった。精神的攻撃の数値換算が可能ならばクリティカルにより10000ダメージを受けている。


「C1ランクのジン様ですね、ランク試験をお受けになっておられませんが?」


 通常ならランク試験などは受けれるようになれば冒険者たるもの高ランクへの憧れから必ず受ける。受験回数なども記録される事から明記してなくても受付嬢には丸判りの情報だ。


「ああ、試験官との戦闘があるだろう、前の町だと女性でね……家訓で女性相手に訓練でも剣を振るうのがちょっと出来なくて、アハ、アハハハ」


 家訓なんて真っ赤な嘘である。女性相手に剣を振るいたくないのは事実だが、実際は恋した相手が試験官で、失恋していて辛くて逃げ出したなどとは云えない。

 寒々しい笑い声になるのも当然だった。


「あら、紳士的なようですが試験官をされるレベルの冒険者や職員なら問題ないですし、油断すると危ないですよ? まあこの村の試験官は男性ですから問題はないでしょうからお受けになりますか」

「宜しくお願いします」


 男性相手ならば問題なかろうと考えてジンは即答する。そして受付嬢の反応が冷ややかで厳しく聞こえるのにも理由がある。ギルドの職員は基本的に戦闘要員でもあるので受付嬢もそれなりに出来るのだ、辺境の職員ともなれば言わずもがなであった。


「受け付けておきます、最短で明日ですが」

「じゃあそれで」


男ならば即断即決である、変な事にも巻き込まれないだろうとジンは頷いた。


「本日はそのまま依頼を受けられますか?」

「いや、宿をとって一休みするよ。緊急の依頼ものがなければね」

「オークの目撃情報がありましたので現在調査中です、もしかすると討伐依頼が発生する可能性も考えられますから、その際はご協力を」


 こういった情報のやり取りが目的で組合(ギルド)に最初に訪れるのである。この手の目撃情報が出たと言う事は可也の確率で討伐が必要な事態が訪れるのでジンも頷いた。


「了解」と軽く告げてカウンターから移動したジンは出口へと向かった。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 ギルドの発行するカードは身分証の他にも様々な事項が記録されている。勿論それは人物評なども含まれていて受付嬢には目の前の青年が実力考査の結果B1級である(ギルド視点)と同時に多くの組合支部の代表が感謝と後ろ盾になる事を記載しているのを見た。

 ジンは知らない、これが冒険者をその土地に留めるなという名目も含まれている事を……要は実力があって最高戦力になりうる対象者に惚れるなと組合(ギルド)は暗に示唆しているのと同義だと言う事を。

 それさえなければ若くしてC1、実力はB1など『超がつくお買い得物件』で組合(ギルド)の受付嬢とはいえ出会いを大切にするならばアタックも辞さない筈である。

 悪くない風貌で線は細いがマッチョで背が高くてお金も実力もある『超が付く優良物件』のだがジンは余りにも自分がモテナイ事からこの世界で俺の顔ってば受け入れられない部類の優男系なんだと完全に勘違いしている。

 その被害妄想の結果、同じような系統の男が奥さんを連れていれば祝福し、恋人がいるとなれば応援するのだ。


「がんばれよ、お前も顔で苦労する(モテナイだろうが)いい人がいるんだから大切にな!」


 などという珍現象を巻き起こす。三枚目以降にすれば腹立たしい話だが本人が真剣なので、「いい男ってのも顔が良すぎて俺達には考え付かない苦労が存在するんだな」という結論に達してしまう。

 更には気風がよくて面倒見までよく男仲間に受けがいい。なにせ自分の顔に普段自信を全くもっていないから言い寄る相手=金目当て、ぐらいにしか考えていないので野郎と居た方が楽しいのだ。


【愛の女神の加護】に本当は括弧をつけて(笑)などとやりたいが転生させてくれた恩神であり疑いたくないなと日々祈りを捧げてしまうジンは人がよかった。


 組合(ギルド)の提携している宿への紹介状を貰って出たジンの姿を見送った受付嬢のメイは溜息を吐き「勿体無いというか残念というか……」と呟きながらクローズの札を目の前に置いて、支部長に報告する為に席を離れた。


 メイに受け付けてもらえると思っていた冒険者が嘆いたのは余談である。

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