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ふれふれぼうず

作者: 月花


勘違いしてた自分が、すごく滑稽で、思い返すと恥ずかしくてしょうがない。

これが恋愛という恐ろしい病なんだろう。


結局、私の一方的な片想いだった。

でも彼はすごく優しくて、私のことを受け入れてくれるんじゃないか。

そんな期待をしてしまう自分を止められなかった。


私は男の人に免疫がない。

今までの好きな人はみんな薄いガラスの向こうにいた。

指でつつけば砕けてしまうほどの脆いガラスですら、私には破る勇気なんてなかった。


そんな私が1度だけ告白をしたことがある。

それは5年前の冬、相手は当時仲の良かった部活の先輩。

彼はとてもモテる人だった。

同じ部活の同級生にも、私と同じ想いを抱えた子がいた。

彼女に私が彼のことが好きだとばれると、とんとん拍子で告白のセッティングをされた。

結果にはなんとなく気付いていたので、フラれる準備はできていたものの、告白した恥ずかしさだけはいつまでも残った。

彼女とは順番に告白しようという話をされていたのだが、彼女が告白をしたという話はそれから卒業まで1度も聞かれることはなかった。


それ以来、私は恋愛で努力したり、積極的に動いたことはない。

自分のルックスがいいとも思っていなければ、モテるとも思っていない。

そんな自分に自信のない私には、男の人にそういう対象で見てもらうためにはどうしたらいのか、正直よく分かっていない。

また、私が頑張ったところで、男同士の話で笑いの種になるだけだということも、経験上知っていた。


だから、今回も友達感覚で仲良くしていれば、それで満足なはずだった。

しかし、彼にとっての友達と恋人の境界はあまりに曖昧で、不慣れな私にとっては、希望を抱かずにはいられなかったのだった。


気のあるような台詞を気まぐれにかけてみたり、たくさんの女の子の間をぬって、わざわざ私に頼みごとをしに来たり、男子2人、女子2人で静かな店にご飯を食べに行ったり、何気なく周りに視線を投げると、遠くにいる彼の瞳とぶつかったり。


今なら分かる。

全て、女として見られていなかったからこその行動だったのだろうと…

それでも、私は頑張ってしまった。

一生懸命に彼を追いかけようとしてしまった。

それが、真実を知った今、叫びながらどこか知らない場所まで走り出したいくらい恥ずかしくてたまらない。


さらに、彼に怖いと思われていた節まであるらしい。

私は、今までの自分の言動を思い返すと、彼にこれからどう接してよいものかわからなくなっていた。

彼は、恋愛経験も豊富で、人の気持ちの分かる人なのだ。

私の気持ちがバレてないはずがない。

彼にどう思われているのだろう、周りにはどう映っているのだろう…

そんなことを考えると、何とも形容しがたいむず痒い気持ちが湧き上がってくる。


最近、時間が解決する問題などないと思い知ったばかりのくせに、今だけは信じて、それに縋ってみたいと思う。


この痛みも、穴があったら入りたいほどの恥ずかしさも、このしとしと降り続く雨が、洗い流してくれますように。

そして、過去の私が起こした様々な言動が、私や彼、周りの人たちの記憶なかから跡形もなく流れきってくれますように。

真っ暗な昼下がり、私は部屋のソファに、溶けたチーズのようにだらりと身を預け、部屋の窓から厚い雲に覆われている空を見上げて願った。


真っ黒い空の中、逆さまになったてるてるぼうずが笑っていた。

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