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アナタ日和  作者: BAN
3/3

2:とある日の日常的な出来事。


変な女と仲良くなった。

家に帰った自分は、ベッドに寝転びながら、携帯に新しく増えたアドレスを眺めながらそう思った。

俺の中学校に、別の学校の制服を着て、保健室に居る女。

人懐っこくて、元気で、辛い事なんてこの世には無いと思っているくらいの笑顔で話しかけてくる女。


今日の保健室での会話を思い出す。

少し笑ってしまう。


けれど、すぐに回想は終わり、今日は全然寝れなかったので、いつもより早めの睡魔が俺を襲い、そのまま寝てしまった。



AM8:00


朝を迎え、起きる。


(うわ、こんな時間にアラームも呼び出しも無しで起きたの久しぶりだ…。)


昨日は学ランのままで寝てしまったので、とりあえずシャワーを浴びて、新しい服を着て、軽く髪の毛を整え、学校へと向かう。


(こんな時間に行って、何もする事ないんだが。)


とりあえず学校へと向かい、いつもの所へと車を停めると、走って駆け寄ってくる一人の後輩。


「先輩っ!。」


バケットシートから体を出し、煙草に火を点けると、後輩の顔の色が青いのに気がつく。


「何だ、どうした。」


明らかに焦った顔の後輩は、膝に手を付き息を整えながら喋り始めた。


「えっと、ユウスケさんが、何だか別の中学校の奴等にリンチにあったみたいで、今病院に入院してるらしいんですよっ!。」

「は?あいつが?、そんな簡単に…?。」

「いや、それが、なんだか凄い人数にやられたみたいで…。」

「ちぃ、またか。どうせ第一中だろう?」

「はい…。で、どうするんですか?。遠藤さんはいつもの人達を集めて昼くらいに第一に向かうみたいですが…。」

「は?遠藤が?…、あんな弱小中に動くのか?…。なら…、ヤバイな。」

「何がヤバイんですか?」

煙草を地面に捨て、靴で踏み消す。

そして、ズボンのポケットから携帯を取り出し、アドレス帳を開きダイヤルする。

3コールくらいすると、すぐに相手は出た。

「もしもし。」

ザワザワとした中で声が聞える。

「もしもし、ヒロキか、学校に居るんだろう。俺の車の所に来い、すぐに。」


用件だけ伝えるとすぐに電話を切る。


「何で呼んだんですか?…。」


後輩が心配そうな顔で聞いてくる。


「まぁ、ちょっと待っとけ。」


数分すると玄関から、やたら身長の高い男が出てきた。


「なんだよ、悠。」

「悪いな、急に呼び出して。」

「いや、いいけどさ、暇だったから。」

「理由は車の中で話すから、とりあえず乗って。」

「ちょ、待ってくださいよ、先輩?どうゆ「いいから乗れ。」

「俺11番なのに…。」

呟きながらしぶしぶ従う後輩。


助手席にヒロキ、後ろに後輩のハヤト。


乗り込んだ二人、少し顔が引き攣っている。


「どうした?、そんな顔で。」

「「いや、お前(先輩)の車…。」」

「行くぞ。」


ギアを一速に叩き込みクラッチを繋ぐ。

校門を一気に駆け抜け、3車線の大きな道路に出る。

9時過ぎという事で、あまり車は多くはないが、飛ばせる程車は少なくない。


「10分以内だ…。そして、第一中のいつもの奴等を俺ら3人で沈める。分かったな二人共。」

「は?こんなに車が居て10分以内に着けるん?」

「そうっすよ、先輩。ていうか、僕は11番だし、ヒロキさんだってシングルナンバーですけど、それで第一を相手にするには少な過ぎますよ…。」

「まぁとりあえず、行くぞ。」

「「へ?」」


今まで40/km程度で流していたシルビア、ギアは3速。

ヒール・アンド・トゥで1速まで落とし、シートに沈み込ませようとするGに快感を感じながら一気に加速する。

速度5秒足らずで120/kmまで跳ね上がる。

「「いやいやいやいやいや…ぁぁぁぁああああ!!」」

100/kmオーバーのスラロームを開始する。FRは高速域に入って行く程安定しない。

それにドリフト仕様なので、オーバーセッティングだ。

だが、チョンブレでフロントに加重を寄せて、右へ左へと高速スラロームを可能にする。

そのまま曲がり角直前でフルブレーキングに入り、クラッチを蹴り、速度を乗せたままドリフトに入る。


乗った二人は単車しか乗り慣れていない為、横から来るGに悲鳴を上げている。


(8分半…。)


第一中学校、校門前。

熱くなったエンジンとターボをクールダウンさせながら煙草に火を点ける。

「ないわ…。」

「ないです…。」


うな垂れている二人。


「いつまでも、単車なんて乗ってないで、さっさとこっちの世界に来いよ。」

「「無理だっ(です)!!」」


「さてと、行くぞ…。この車はあいつらに知られてるからな…、お出迎えみたいだぜ。」


バタンッ バタンッ


煙草を咥えたまま、ドアを閉め、出てくる3人。


第一中学校の校門入ってすぐの駐車場には早くも増え始める人。

ベランダから眺める男や女の数々。


「先輩、本当に行くんですか…?」

「まぁな。面倒な事になる前に片付ける。」

「3人なんスよ、3人…。」

「まぁまぁっ。」


ヒロキが後輩の肩を叩く。


駐車場には15人くらいの人数が集まっていた。


「ったく、どいつもこいつも人数だけは立派なもんだ…。」

呟く俺。


校門を3人でくぐる。


集団から、リーダー格らしき男が出てくる。

身長はヒロキと同じくらいであるが、幾分かガタイが良い。


「ウルサイ車が校門の前に居るって言うから来てみたら…てめぇは…。」

「あぁ、ユウスケがキミらにお世話になったみたいで、ご挨拶に、と思いまして。」


軽く見上げる格好で話す俺。


「アイツが俺らにガンを飛ばしてるから、返事をしただけだっての。」

「へぇ、お得意の集団殺法ですか?相変わらずですね。」

「あぁ?馬鹿にしてんの?今日はこっちの頭が来てないからって調子に乗るなよ?。」

「オタクらの頭が云々っていうか…、こっちの頭が云々を気にした方が良いかと…。」


「ねぇ、ヒロキ先輩、大丈夫なんスか?悠さんにだけ任してて…、相手すげぇでかいっスよ?」

俺の後ろでヒロキに心配そうに聞くハヤト。

「あぁ、ハヤトはしらんのかいね。」

「何をっスか?」

「悠をさ。」

「は?。」


……


徐々に相手が熱を帯びてきた。

「ゴチャゴチャうるせぇっ!!。」

「この程度の会話に付いて来れないなんて、なんて知能が… っと。」

相手の顔面に向いたパンチが飛んできたが、横に避ける。


「先輩っ!」

「悠っ!」


駆け寄る二人。


相手はもはや話が出来る様な状態では無いみたいだ。


「先輩…本当に3人で?…。」


俺は相手を視線に真っ直ぐ据え、答えないでいた。

相手の後ろの奴等も臨戦態勢だ。


「ハヤト、悠を良く見ておけよ。」

「え?」

肩に手を置き、呟くヒロキ。


俺は真っ直ぐ前を見たまま、ヒロキに話かけた。


「いつものように頼んだぞ。」

「あぁ。」


状況が分からないハヤトの目は二人の間をいったりきたり。


学ランの胸ポケットから煙草を取り出し咥える俺。

そしてジッポで火を点ける。

左手を後ろに右手を真っ直ぐ伸ばし相手に。

腰を軽く落とし、右足を前に左足を少し後ろにして軽く左を向いた状態に。

手のひらを空に向け、構える。


「口で分からないなら、体に教えてやるよ。こい。」

クイクイと指を曲げて挑発する。

ベランダからの観衆はヒートアップを始め囃したてる。


「こっの、糞チビがぁぁぁ!」

「「しゃぁぁぁああああ!!!!」」


「ちょ、先輩っ!!」

焦るハヤト

「っしゃ、楽しくなってきたっ。」

顔が笑顔なヒロキ



走ってくる奴等を正面に据えたまま俺は、リーダーっぽい奴の右パンチを軽く体勢を沈めて、起き上がる勢いを乗せた膝を腹にいれる。


「っ!」


空気と共に声にならない声を漏らす相手。


そしてクの字に折れた相手の顔に左足の太ももとふくらはぎを使って挟み、捻り倒す。

そのまま、そいつは放置して、後ろから走ってくる雑魚Aのパンチを左手で止めて、そのまま捻り、膝をわき腹へ、そして、一旦沈み、下から顎を蹴り上げる。


真後ろへとぶっ倒れる雑魚A。


横から来る雑魚Bへと体を回しながら、足裏での蹴りを入れて飛ばす。

蹴りを入れた状態へと向かってくる相手へもう一度沈み、足を払う。

倒れた相手へと、前宙しながらカカトを落とす。


片足を伸ばし座り込んだ状態の俺。


「悠っ、後ろ!」

ヒロキが叫ぶ。


状況を把握した俺は、そのまま後ろへと回転しながら相手を視認し、逆立ちの要領で両足で蹴り飛ばす。

そして、立ち上がりもう一度構える。


何人か尻込みした様だが、それでも圧倒的人数差に気を大きくした相手は向かってくる。


左腕で相手のパンチを払い、顎へと掌底で顔を跳ね上げる。

そして、持った相手の左の袖と相手の襟を掴み、投げ飛ばす。


後ろへと、少しムーブシフトし、向かってくる何人目かの相手へ飛び膝蹴りを入れ、そのままの勢いで次の標的へ向かう。


「な、なんなんスかあれ…。」

呆然と立ち尽くすハヤト。

「あれが、悠だ。」

「化け物っしょ、あんなスマートな体型で飛び回って、まるで映画のシーンを見てるような…。」

「だろう?それであいつ、学年一位の学力だぜ?まるで、少女漫画の主人公だよな。」

「そう…ですね…。」

「ただ…。」

「ただ?」

「あいつが戦ってると、ある癖が出るんだよ…。」

「癖?…。」

「お、そろそろじゃないか。見てみろよ…。」


俺は相手に掴みかかりヘッドバットを決めながら叫ぶ。

「ヒャハッ! もっと来いよ!」

右側頭部へと蹴りをいれる俺。

「まだまだだろぉ?こんなもんかお前等は!?クックックッ…。」




「……悠さん、笑ってる?」

「あぁ…、俺らで呼ぶバーサーカー状態に入っちまうんだよな…。」

「何か問題でも?…。」

「いや…、別に問題は無いんだが、良く考えてみろ、あれが味方だから良いものの、あれが敵で笑いながら襲いかかってくるんだぞ?。喧嘩が、こうして傍から見てると、一方的な殺戮に見えてこないか?…。」

「確かに…。」

「で、挙句の果てに、他校の奴等から付いた異名が、笑う悪魔、青い悪魔。」

「悪魔…っすか…、てか、二個目は車の色っスね。」

「あぁ…。俺らの頭も大概だが、あいつが一番異色だ。」

「てか、俺頭を知らんのんスけど、悠さんは何番なんですか?。ヒロキさんが6番ってのは知ってますが…。悠さんは集団戦の時に出て来るんスけど、いっつも後ろで車のボンネットに座って煙草吸ってるだけで、喧嘩に参加してるの見た事無いンで、こんなに強いとは知らなくて…。」

「そうだな…、あいつは面倒な事が嫌いだからな。頭は全部悠任せな所もあるから、お前が見た事も無いのも頷ける。」

「って、あんなのより強いンですか?ウチの頭は。」

「悠と頭が本気でやりあっている所を見た事は無いが、悠曰く、(疲れた、面倒臭ぇ…)だとよ。」

「それは?…。」

「多分、本気で行けば勝てるだろうが、仲間内のナンバーなんて気にしてないから、どうでも良くなったんだろうな。」

「はぁ…、どんだけなんスか?あの人…。」

ハヤトはやりきれ無さそうに煙草を吸い始めた。

「で、あいつのナンバーは…形は3番だ。だが実際のナンバーは…。」

「形だけ?…実際…?。」




「らぁっっ!どうした!?そんなもんかてめぇらッ!もっと俺を楽しませてくれよッ!」


後ろ飛び回し2連蹴りでリーダー格をぶっ飛ばす俺。


「実際のナンバーは…。」

煙草に火を点けるヒロキ。

「ナンバーは?」

「ゼロだ。」

「ゼロっ!?なんスか、その厨二病みたいなナンバーは。」

思わず笑うハヤト。

「そうだな、確かに笑っちまうナンバーだよな。だが、見ろ、終わったみたいだぞ?。あの状況を見て笑えるか?…。」



うずくまる奴等の中に立つ俺。

ベランダの観衆は息が止まったように静かだ。

何人かの女子は口に手を当てて絶句している。


「……息一つ上がってない?……。」

唖然とするハヤト。


「で、こっからが俺の役目だ。あいつの蹴り技を掻い潜って目を覚まさなければならん…。」

「えぇぇぇ?」


走りだすヒロキ。


向かってくる相手に無意識に手を出す俺。


「終わったぞっ悠っ! っ、俺だ、ヒロキだっ!」

蹴り技を繰り出し始める俺。

「ったく、はよ、気付けこらっ。ちょっ、っぶな!」

しゃがんで避けるヒロキに残った足で蹴りを入れる俺。

その足を受け止めて掴むヒロキ。

「あ…、スマン…。」


一旦動きが止まった事で気付く俺。


「ったく、毎回毎回、大人数相手になると暴走するその癖、どうにかならんのか?。疲れた所に、更にお前の相手するのは御免だぜ。」

「そうだな…、気をつけてはいるんだが…。」

「まぁいいが、お前のお陰で俺等は楽をさせてもらっているからな…。」


共に立ち、共に並び立つ二人。

駆け寄ってくるハヤト。


ベランダの観衆は一斉に歓声を上げた。

俺達が、鎖を解き放ったようだ。


「うるせぇ…、こいつらも皆に嫌われてるだけの不良だったみたいだな。」

地面で唸る第一の不良を眺めながら言う。

「まぁ、俺等みたいなのが特殊って事だよ。」

「先輩達シングルナンバーは、ウチの学校では女子からの注目の的ですからね。」

「はぁ…、俺はシングルナンバーじゃないよ、13番だよな、な、ヒロキ。」

「そうだな、お前は面倒な事にはまったく動かないからな。まだ、パシリにでもなる13番の方がナンバーズらしいよ。」

「どうゆう意味だそれ。」

「そうゆう意味だよ。」

笑うヒロキ、不満な俺。

「先輩はゼロなんでしょ?」

唐突に言うハヤト。

「てめ、ヒロキ、言ったな?。」

「いや、言わずにどうやってあの状況を説明しろと?。」

「まぁいいか。ハヤト、形は俺は3番だが、基本的に3番以下が面倒な事を処理する事になってる。だから、俺が動いたのは内緒にしとけ。今回、うちの頭が出るって聞いたから、こうやって出てきたが。俺が動く事はあまり無い。」

「え?面倒な事が嫌いなのに、今回みたいな面倒な事は処理するんスね?。」

「本当に面倒なのは、ウチの頭が出てきた時のほうが面倒なんだよ…。」

ヒロキが補足する。

そして、煙草に火を点けた俺。

「ま、お前もその内分かるさ。11番だが、お前はもっと上にいける。」

「そうっスか?、全然自信が湧かないっスよ。悠さん見てたら…。」

「こいつは色々な意味で馬鹿だから気にするな。」

「どうゆう意味だ…。」

「そうゆう意味だよ。」

笑うヒロキ。結局不満な俺。



……ウォンウォン! ゴアッゴアッ!


遠くで単車の音がする。


「お、ここの上の連中か?面倒な事になる前に帰るぞ。」

「うい。」

「はいっ。」










車に乗り込み、スピードを上げて去って行く3人。


ベランダからそれを眺めて居た一人が教室にゆっくりと戻っていった。


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