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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第三章 体育祭&杏理編

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番外編IFルート 景 BADエンド② IFルート心から分岐




「はぁい透あーん♡」

「……」

「もうちゃんと口開けてくれないと溢れちゃうよ? ……ほら溢れた♡」

「……」

「お口拭いてあげるね♡ 本当に透は僕がいないと駄目なんだから♡」

「……」

「喉渇いてない? 飲み物持って来るから待っててね♡」


 彼女はそう言うと嬉しそうに微笑みながら固く閉ざされ頑丈に施錠された扉から出て行った。俺は彼女のいない隙に、まともに働かない脳みそを思考させる。


 あれからどのくらいの日数が経っただろうか、彼女……いや鍵咲 心に拉致監禁されてから少なくとも二ヶ月はおそらく経過したであろう。窓も時計も、時間の経過を感じさせないこの状況で何故それが分かるかというと、それは食事の内容で理解ができるのだ。


「今日は“ハンバーグ”か……」


 拘束された身体は動かすことができないが、かろうじて動く首をずらして一時的に心が去ったテーブルに置かれた料理を確認してみた。

 献立は見える範囲でもハンバーグと付け合わせのポテト、他にもデザートのプリンがある。

 

 それを見て俺は時間を認識することができた。


「……となると時間は夜か」


 何故そう思うのか? それは至ってシンプルな理由になる。

 

 心の料理は朝と夜とで食事の内容が違うからだ。


 心に拉致監禁されてから俺の食事は朝と夜の二食になっている。昼が無いのは心が学校に行っているからだ。

 学校にわざわざ行っているのは俺を誘拐したことを周りに怪しまれないようにする為らしいが……正直それは今の俺にとって重要じゃない。


 心の作る朝飯は主にパンがメインで、そこに卵とハム、さらにはバターやジャムといった朝ご飯に相応しい献立となっている。

 そして夜、これは肉料理や魚など昼を食べれない俺の為に豪華な食事の内容になっているのだ。


 ハッキリ分かりやすく言うと”朝に比べて夜がかなり豪華な食事”これにより閉鎖的な状況の中でなんだかんだ時間の流れが掴めているのだ。


 だがそれ以外分からないとも言える。


「……心のやついつまで続ける気だ」


 そんなことを考えていると、再び扉がゆっくり開き始める。

 俺はいつになったら解放されるのだろうか、そんな叶いもしない思考を巡らせながら扉から姿を表した彼女を見て、俺は目を見開いて驚きを露わに声を上げた。

 

「景ちゃん!!?」


 少し前までよく見慣れた可愛らしい透き通った白髪の後輩が目尻に大粒の涙を浮かべ嬉しそうに笑う。


「助けに来ましたよ先輩!!」




 先輩今外しますからね、と拘束を外してくれる景ちゃんはもはや俺からしたら白馬の騎士、いや怪物に攫われた姫を助けに来た配管工と言うべきか、ともかく俺はもうあまりの嬉しさで全ての拘束が外れた瞬間に景ちゃんを強く抱きしめた。


「景ちゃん!! ありがとな助けに来てくれて!! 本当にありがとう!!」

「おっと……先輩大丈夫でした?」

「大丈夫じゃない!!」

「ですよね。あれちょっと痩せました?」


 景ちゃんのいつも通りの対応に耐えられずに涙が溢れてしまう。格好の悪い姿ではあるがそんなどうでもいい事気にしていられない。

 体格差があるせいで俺が景ちゃんに覆い被さる様になるが、景ちゃんは気にせず俺を抱きしめている。なんなら俺より強い力で、


「本当に良かったです……無事で……」

「ひ、景ちゃん……く、苦しい」

「ご、ごめんなさい先輩」


 さすが景ちゃんだとんでもない腕力……これは間違いなく本物景ちゃんだ。


「そういえば心は? さっき上に行ったんだぞ?」

「あぁ、私が呼び鈴を鳴らしたのでそれで出て来たんですね。上にいますよ」

「え……」


 上にいる、その言葉に身体が思わず硬直した。身体的恐怖を植え付けられたわけではないが、心のドス黒く濁ったあの目を見ると身体が動けなくなってしまう。これはある意味恐怖を刻まれてしまったようだ。


「大丈夫ですよ。ほら行きましょう先輩」


 怯えて震える俺の背中を優しく摩ってくれる景ちゃんと共に閉じ込められていた部屋を出て階段を登ると、昔来たことがあった心の家の廊下へと繋がっていた。


「まさかこんな改造してるなんて……」

「防音もしっかりしてましたし、“あれ”もバレないようにしてましたから」

「そっか……」

「本当にすいません先輩遅くなって……ほら早く家に帰りましょう!」


 廊下から見える玄関を指差し景ちゃんと共に歩こうした時、ふとした疑問に気付く。


「え……」


 そこにいたのは玄関に倒れ込んだ女性だった。俺はその女性をよく知っている。


「こ、心?」


 見覚えのある背丈、綺麗だった黒髪ではなくなったがここ最近毎日のように見た白髪、そして見覚えのある顔。


「え、え、な、なん……」


 ただ一つ見覚えのないこと……それは、




 本来正面を向いている筈の心の顔が、何処からどう見ても“背中の方を向いている”ということだった。




「……はぁ?」


 首の向きに違和感を覚え、気がついた時には俺は心の側へと駆け出していた。


「心! 心!!?」


 抱えてみるがやはり首の向きがおかしい。

 虚な瞳はいつもの笑顔で俺を見ることは無く、ただ糸の切れた人形の様に全体重が俺の腕へと負荷をかけ、


「心おいふざけんなよ!? おいって!!!」


 一切返事のないその小さな身体は再び俺を愛おしく呼ぶことも、優しく抱きしめ返してくれることもなく、視界の隅に倒れ込んだ心の近くに転がる包丁を眺めながら俺はことの重大さを理解した。


「……ことだよ」

「なんですか先輩?」

「どう言うことだよ景!! なんだよこれ!!」


 腕の中でピクリとも動かない親友を抱きしめ、歯を食いしばり涙を流しながら叫ぶと、景はアッサリとした態度で言い放つ。




「殺したんですよ」




 景の発した言葉を認識した瞬間、俺の中で何かが弾けた。


「なんでだよなんで心を!? 確かに今回は行き過ぎたし良くなかったさ! でも俺はこうしてピンピンしてるし何もされてないぞ!? なんで! なんで殺す必要があった!!?」

「私から先輩を奪ったからです」


 は……はぁ? 何言ってんだよ?


「先輩は私の全てですから、私から先輩を取ったんだから当然です」

「なにいってんだよ……」

「それに、“それは”私が来た時になんて言ったと思います? 『僕達の関係に口を出さないで欲しい。僕達は愛し合っている』ですって笑わせないで欲しいですね。先輩は私のことしか好きじゃないんですから」

「何言ってんだよ……」

「先輩♡ ようやく“それ”がいなくなったんですから一緒に海に行きましょうよ♡ 私いつか先輩と海に行きたかったんです♡ そしたら、“それ”なんかとの時間を忘れる程いっぱい遊んで____」

「さっきからお前何言ってんだよ!!!!」


 俺の絶叫が響き渡る。


「だって先輩がこんな奴ばかり構うからいけないんですよ。だからそれもつけあがるんです」

「……」

「私が先輩のことをどれだけ愛しているか、どれだけ救われてきたか、それを知らないそれが私達の仲を引き裂こうとするからこうなるんですよ」

「……」

「良かったですね。それも最後に先輩に抱きしめてもらえて、でも先輩私にも構ってくれないと嫌ですよ? 妬いちゃいます」

「お前頭おかしいんじゃねぇか……」


 一方的に景を睨みつけお互いにしばらく黙り込む。


「先輩……私のこと好きですか??」


 こんな状況だというのに笑顔で質問してきた景。


 狂ってやがる……、最初から分かってたことだった。どんなに優しくてもコイツも他の奴らも俺に殺そうと、お互いに殺し合いをしそうにもなる、そんな奴らだった。


 俺の考えが甘かった。皆仲良く? ヒロイン? 


 笑わせるな。こんなの既に人の道から外れた化け物達じゃないか、常人の考えが通用するわけない。化け物は化け物同士で好きにやってろ。

 こんな奴らともういられない、俺は心の側に転がる包丁を素早く手に取り、喉に押し付けながら景に呪いの言葉を吐き捨てる。




「誰がお前みたいな化け物を好きになるかよ」




 次の瞬間____俺は喉を包丁で突き刺した。




        ~おまけ~




「おぉ〜透よ、死んでしまうとは情けないのじゃ」


 泣き叫ぶ景を眺め、神様は退屈そうに嗤う。



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