リリー
「どうぞこちらへ」
そう言うと、少女は小さな庭園へと私を案内した。
そこには昔の団子屋を連想させる傘と、長椅子が置かれていた。
「し、失礼します」
先ほどは立派な屋敷や、綺麗な少女に驚いてそれどころではなかったが、冷静になってみると私はなぜ案内されているのだろう。
しかも名乗った覚えはないのに少女は私の名前を知っていた。
一体少女は何者なんだ?
私は意を決して少女に尋ねてみる。
「あの、ここはどこなんですか?貴方は一体、、、?」
少女は優雅に椅子に腰を下ろしながら、
「挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくしハープと申します」
そう静かに告げた。
「ハープさん、、、」
正直見た目や屋敷は和を感じさせるものだが、目の前にいる少女が
洋風の名前をしており驚いた。
「あ、えっと、私は藤野小百合と言います」
人に名を尋ねる時はまず自分から、それを守れはしなかったが私も遅れて自己紹介をする。
すると少女は、茶を一口啜り存じ上げております。
と言った。
なぜですか?そう。聞こうとしたが、私より先に少女が口を開いた。
「そして、ここはどこか、という質問の答えですが、まずは順をおって説明するとしましょう。」
少女はそう言い続ける。
「単刀直入に申し上げます。――あなたは亡くなったのです」
冗談なんか言って、そう笑い飛ばしたかったが、非現実的な現状が本当なのだと言っている気がした。
しかし、急にそんなことを言われて動揺しないわけがない。
「死んだなんてそんな……」
声が震える。
でもハープの表情は揺らがなかった。そして澄んだ眼差しで私を見つめる。
「お忘れですか?、あの日貴方は雷に撃たれて、、、」
ハープがその先を言わずともあの日の光景が頭の中に流れてくる。
「っ……!」
突然、全身を鋭い痛みが駆け抜けた。
心臓を鷲掴みにされるような衝撃、血が沸騰するような熱。
視界が一瞬で赤に染まり、耳鳴りがする。
「な、に……これ……っ」
体が燃える。皮膚の内側から焼かれていくような痛み。
息を吸おうとしても空気が肺に届かない。
叫び声を上げたはずなのに、喉からは掠れた音しか出なかった。
必死にリリーへと手を伸ばす――けれどその姿すら霞んでいく。
「……小百合さん!」
遠くで誰かが叫んだ。
けれどその声も次第に遠のき、やがて真っ赤な視界が暗転していく。
私はそのまま、再び深い闇へと沈んでいった――。




