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転生後、任務先は魔法学園でした  作者: づず
第ニ章 巣から旅立つ子
9/16

1:① 僕だけの魔法使い

前話から読むことをお勧めいたしまする

レイ・バーノイン学園。

学園に設立された寮に入寮する生徒は学園の入学式よりも先に寮に入り、入寮式をすることとなっている。新寮生は式の前日までに寮に移り、翌日に入寮式が行われる。今日はその前日。


ミレナはまとめた荷物をリビングのテーブルに置いた。そして家内を見渡しながら歩いて行く。周りの家々と比べると家も敷地も広い。家具は質素だが全て揃っていて、財力面では貴族に劣っても裕福であったことが伺える。

ミレナが転生した先の家。第二、否。第一と言っていいだろう。愛情を持って育ててくれた今世の母はミレナが六歳の時に病気で亡くなった。最後の最後までただ一人の娘であるミレナを愛して。この家も複雑なようで、父は貴族で母は所謂不倫相手。不倫相手との間に子供ができても見捨てなかっただけまだ優しいだろう。定期的に金銭を送ってくれたし顔も出しに来てくれた。魔法など使わなくても分かった。父は真の嫁よりも母を愛していた。こんな優しい笑顔を向けるのだから。母が亡くなる時までずっと寄り添い、泣き喚いていたのだから。母が亡くなってから、父は私も貴族の家に迎え入れようとしたが私が断りを入れた。ただ、金銭は定期的に送ってくれる。何かあれば手紙を送るようにと言い聞かせても来ていたし。

母の生前、母に伝えたように父にも伝えた。


リビングの暖炉の前で母の絵を眺めていた父に告げた。

「お父さ…。ベルゴルド伯爵様。」

父は目を見開いてこちらを見た。

「母の亡き後に伝えるのもどうかと悩みましたが、母にはもう伝えております。貴方だけ仲間はずれ、なんて嫌ですから。」

「___ノア?」

「私は転生者です。今まで騙すようなことをして申し訳ありません。」

父は母の絵を膝下に落とす。

「_____転生…?私たちの…ノアは?」

「この世に生まれた時より私はこの身に宿っておりました。」

「_______そうか、そうか…合点がいった。妙に大人びた節があったからな、はははっ。変わらず、お父さんと読んでほしいな。」

空笑、そんな笑い声を出した。ミレナには只々罪の念が覆い被さる。

「はい、申し訳ありません。」

「いや、謝ることはないよ。私の方こそ申し訳ない。こんな家庭に転生させてしまって。」

「私は感謝してます!家族の温かさを初めて知れました。」

「_____うん。君は、魔女様なのだろう?」

「__っ!なぜっ?!」

急なことだった。正体を見せる節なんて見れてないはずだ。大人びた点に関して以外は。転生と聞いてなぜすぐに魔女が浮かぶのか。まぁ、予言として世に知れ渡っていたが。

「私の書斎にある魔女様の本をよく読んでいたからね、あんなに難しい本を。」

「あぁー…ははっ。」

「振る舞いも平民とは思えなかったしね。」

「あぁーー。」

確かに。盲点だった。

「____貴方は私達勇者パーティーの行いを悪い物としますか?」

「行い…?あぁ、契約のことか。とんでもない。私は平和主義だ。だから君たちが精霊と契約を結んだことも素晴らしい判断だと思うよ。あぁ、あの話は本当だったのか。君が転生を必要としたのは…」


「お父さんもお母さんも、普通の反応じゃなかったな。」

母に伝えた時、彼女は悲しむこともなく只々喜んで抱きしめてくれていた。一人娘が転生者、中身は別人、赤の他人。それでも喜んで私との出会いを喜んでくれていた。転生してからノアとしての姿が着々とミレナへと近づいており、勇者達を狙う者に気付かれぬよう魔法をかけていた。姿を変える魔法とその変化を周りに不思議がられない魔法。しかし、母に告白して以降母の前でだけ、父に告白してからはずっと魔法を解いていた。真の姿を見た彼等は変わらず喜んでくれた。こんなに美しく私達の娘は成長してくれていたのだと。

「家族って、こんなにあったかい存在だったんだ。」

ミレナはリビングの支柱に手を当てて台所を見る。台所には亡き母の姿が幻として映る。こちらに笑顔を向ける母。

そのまま階段を上がり、父の書斎へと辿り着く。換気のため窓を開けた。振り返り悩むことなく真っ先にその本を手に取り、抱きしめる。

「私もどこかで、暖かい存在を求めていたのね。もう、貴族だった時にそんな想い捨てたと思ってたなぁ。」

ミレナの脳裏にはある情景が浮かぶ。


己を指差し嘲笑う、ドレスを纏った女達。

こちらにご馳走を飾った皿を投げてくる人々。

目の前のベッドに裸で寝転がる女と男。

己の腕から崩れ落ちて行く恩師である親友。


心が段々と冷えていく。

ミレナは本を抱えてしゃがみ込んだ。

(お母さんもメイももういない。お父さんは貴族だし会っちゃいけない。)

か細い言葉が発せられた。


「_____誰でもいい。誰か__私を暖めて。」







「僕じゃだめかい?」



「……ッ!」

声のする窓に目を向けた。

そこにいる金髪の男性を見て気づく。

一次試験の時に似ていると感じた男性、あれは本人だったのだ。

外側の窓の縁に腰掛け、ミレナと似た青い瞳で見つめる。

「やっと見つけた、僕だけの魔法使い。」

別サイトで書いてる作品と行ったり来たりなのもあり投稿頻度はやっぱり遅めかと

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