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転生後、任務先は魔法学園でした  作者: づず
第一章 バイバイ平穏な生活
4/16

4:二次試験と再会?

誤字脱字あれば申し訳ありません。






「おい待ってって!ガルス!」

レイ・バーノイン学園内の廊下。ある三人の生徒とその前方に白髪を靡かせる一人の生徒が庭園へと駆け足で走って行く。廊下の窓から見えるのは今年の受験生たち。彼らの向かう先は庭園だった。

「うるせぇ、二次試験が始まっちまう。」

ガルスと呼ばれた生徒の表情は険しかった。それは怒りのように見えるが、どこか他の感情にも見える。

「やっぱあの…オルデラン家の生徒?」

「228でしょ?ガルスとちょっとしか変わんないよね。」

「廊下走んなよガルスー!」

(オルデラン家?そんなの今はどーでもいい。俺が言ってんのは…)


***


「バーノイン学園の…先輩?」

「何でここにいるのかしら。」

庭園に着くと受験生と学園の生徒がいた。彼らの会話内容を聞くところ、入学後の部活勧誘だろう。こんなにも早く勧誘が始まるのか、なんてことを思っていたら、彼らの視線はノア、ではなくアレシュに向けられた。その視線は先程の魔力量測定に関することなのか、部活勧誘のことなのか、それとも…

ノアはアレシュの前に立ち、アレシュに注がれていた視線を一身に受けた。民衆を見渡しながらノアは口を開ける。

「アレシュ。もしかしたらだけど二次試験、実技面じゃない内容かもしれないの。絶対諦めないでね?」

「う、うん__?」

「受験生の皆さんはこの陣の中に入ってください。」

試験官の言葉に従い、全員が下に描かれた大きな魔法陣に乗る。

「これより、皆さんを異空間にお送りします。そこからここへ戻ってきてください。そうすれば試験は合格です。私達が脱落と判断した場合は強制的に戻します。」

数名の教師達が庭園内の他の二箇所にも魔法陣を描いていく。おそらく、あれがその異空間から戻ってくる出口なのだろう。

「や…説明、それだけですか?」

「あまりに抽象的すぎる。」

生徒達が声を上げる。しかし、その言葉の波を断ち切るように監督官が告げる。

「それでは、転送します。」

円を囲むように四人の監督官が立ち、詠唱を始める。この時代では転送には長い詠唱が必要らしい。

(なんでこんな不効率なん)

「おい!待て!」

背後から声が聞こえた。数名の生徒が振り返るのにつられてノアも振り返る。背後にはこちらへ走ってくる長身の男。彼と視線が合った時、その男が手を伸ばし、

「お前は…!」

「転送!」

監督官の声と同時に、ノアの視界は白い閃光に包まれる。こちらへ走ってきていた男の姿は周囲の人と同じく消え去った。

「誰だったのかしら。見たこともないは…ず…

はぁ。今無意味な思索をしちゃいけないわ。」

ノアは目を瞑り、転送まで体を流れに任せる。


***


試験前の会話を思い返す。パーティーメンバーのシャロン、クローカーとの会話を。


「いいかミー、一次試験は余裕だ。だがな、二次試験は正直今のあんたにはきついかもしんねぇ。」

「はぁ??」

ミレナは紅茶を嗜んでいた手を止める。訝しげな顔でシャロンを睨む。

「私が魔法学園の試験に落ちるとでも?わ・た・し・が?」

「試験内容が中々に酷いんです。」

クローカーが口を挟んだ。

「試験の説明をさせていただきますと…

二次試験の前に、魔力量の測定が行われるはずです。正直、そこで魔力量が低ければ試験官から落とされやすくなります。」

「逆に魔力量の高い生徒は学校側としても合格させたいからな、監督官から落とされることはまぁないだろ。だがな、魔力量が高い生徒は、二次試験の負荷に耐えられねぇから脱落しやすくなるんだ。」

「試験は魔力量で難易度が決まるってこと?」

「ああ、測定で手を抜いても意味はないぜ。監督官が魔力に合った試験を作るわけじゃねぇ。勝手に作られるんだ。」

ミレナが紅茶を一口含み、ソーサーに置く。口内に残る紅茶を味わってから口を開き述べる。

「測定の結果で試験官の印象は変わるけど、難易度は本来の魔力量に準ずるってことね。」

「はい。」

「ああ。」

「ふーん。試験の内容は?」

「それは」

「いや。」

クローカーの口元に手を置き、クローカーの言葉をシャロンが遮った。

「試験内容は言わねぇ。」

「はぁ??」

ミレナが机に身を乗り出してシャロンを強く睨む。

「転生したら任務を頼まれた挙句、その手助けもしてくれないっての?」

シャロンがクローカーから手を離し、机に肘を付く。憐れむような、そんな表情でミレナを見据えた。

「これは、あんたにとってもいい機会だと思う。まだ引きずってんだろ。あいつの事。」

「ッ______!」

ミレナは大人しく椅子に座り直し、ティーカップの縁を指でなぞる。

(あぁ…嫌になる。)


***


なんてことを思い返していると、閃光が消え去って行く。感覚も段々と戻っていき、ノアは目を開ける。そこは霧に囲まれた真っ暗な世界。ただ一人そこに立ち、こちらを見る誰か。己の手と服装を見て変装魔法が解けたことに気付く。その姿はノアではない、


_______ミレナだ。


「なるほど、二次試験の内容は精神面なのね。

_____なんていやらしいこと。」

目の前の人型を軽く睨み、霧が晴れていく。

「会いたかったわ。けど会いたくなかった、偽物の貴方には。」

目の前に現れたのは琥珀色がかった髪を持つ中性的な顔立ちの女性。その姿を見たミレナの瞳は想いとは裏腹に潤む。女性が首を傾げ、口を綻ばせる。

「そう?ボクは会いたかったけどな。ミレナ。」

手を合わせ、思い出したように女性はミレナに尋ねた。

「そうだ!どう?転生してから皆んなには会った?」

「ええ、クロとシャロンに会ったわ。」

「あれ、ルージアは?」

「______はぁ。私、早くここから出たいの。」

「そんなこと言わないでよ。変装魔法解けちゃったみたいだけど、転生後も姿はあんまり変わらないね。魂が影響してるのかな…変わらない君と再会できて嬉しいよ。」

「_____。」

ミレナは只々その女性を見つめる。長めの髪を指先に巻き遊んでいる女性を。

「ここから、出たいんだけど。」

女性は困ったように、柔らかく笑った。

「あの扉、開けたら出られるよ。」

女性は自分の後ろを指さした。その先には白色の扉。あの扉を開けるだけで出られるのだ。案外簡単な試験なのかもしれない。ミレナは歩を進める。

「あっ、もう一つあるよ。


『ボクを殺すこと』


君ならできるでしょ?ミレナ。一度ボクを殺したんだから。」

ミレナは歩を止めた。俯いて、苦し紛れに言葉を発する。

「貴方は、、本物のメイはそんなこと言わない。」

「何故?実際あの戦いでボクが死んだ理由は君だ。ボクだって、今頃みんなと生きていたはずなのに。」

「ぁ、あれっ、は…」

「もしかして、やっぱりボクの事嫌ってたの?だからあの戦いでボクを殺したの?」

ミレナは顔を上げて手を胸に置く。そして声を荒げた。

「違う!!私が貴方を嫌うわけない!」

「殺したのに?ボクが__だから?ボクが___だから?殺そうとしたの?」

発されたはずの言葉を周りの空気の溶け、聞こえなかった。ただ、ミレナの心には届いた。

「ち、が…貴方を嫌うわけない。私を救ってくれた、メイを。私が嫌う筈無いじゃない…」

ミレナはその場で膝を付き、手で顔を覆う。

「私のせいで、貴方を死なせてしまったの。ごめんなさい、ごめんなさい…」

その女性は蹲るミレナを見下ろして口元をにやつかせる。

「あぁ、ボクは死んだのに、君は転生してまた生きていて…世界は楽しいでしょ?ボクの味わえない世界は。」

皮肉っぽくそんなことを女性は満面の笑みで言う。

「何度も、思ったの。死んだのが私で、転生して、生きていたのはメイならどんなに良かっただろう、って。ごめんなさい、貴方が与えてくれた恩を、私は仇で返してしまった。」

「うん。ボクを殺すような君には友達なんて、大切な人なんて、一生できないよ。そんな君が再び生き返ったって、意味なんてないんじゃ無いかな?」

(そうだ、メイが言う通りだ。私なんかが、生きていたっ、、て…)

涙で滲んだ瞳がゆっくりと開かれ、記憶を遡る。はるか昔の。転生する、深い眠りについた時よりも前の古い記憶、その声を。



『そんな顔しないでよ。ボクからの最後のお願い、君は生きて。ずっと先で待ってるから。

きっと、また___』


(そうだ、貴方が、メイが、そんなこと、言うわけない。)


『待ってるよ。ミレナ。君とまた出会える日を。』


遡る記憶の中、男性らしい声が響く。


(あぁ、"こいつ"のせいであいつのことも思い出しちゃったじゃない。)



ミレナは地面に手をつき、ゆっくりと体を起き上がらせる。一方で女性は眉間に皺を寄せて、笑顔だった表情を曇らせる。

「ありがとう、お前の言葉で思い出したわ。確かに私にはもう友達も大切な人もできないでしょう。けどね、私はメイに『生きて』って言われたの。だから、私はこの時代でも、生きる。」

ミレナはその女に腕を伸ばして指差す。目を瞑り、ゆっくりと息を吐き、

「鑑定」

鑑定魔法を発動した。瞳の中に魔法陣が描かれ、正体が顕になる。目の前にいるのはメイではない。体の恥部を水で隠しているだけでほぼ裸と言っても過言ではない姿をした人。否、人型を象った、

「これだから水精霊は嫌いなのよ。貴方、私への感謝はないの?」

水精霊は何も答えることなく笑顔で微笑む。

(上位ほどでもない、中位精霊かな。)

ミレナは己が鼻声になっているのに気づき、軽く一笑し、両頬を強く挟んだ。真っ直ぐに水精霊を睨み、

「風」

その瞬間、水精霊を風でできた球が包んだ。そして中には風でできた無数の針が発生する。

「扉から出てもいいけど、ムカついたから腹いせでもしようかしら。」

水精霊は至って落ち着いて返答する。

「残念です。貴方様を

______もう少しで再び死に追いやれたかもしれませんのに…。」

ミレナはまだ目に涙が溜まっていたことに気付き、袖で拭った。

「惜しかったわよ。」

ミレナは腕を下に降ろし、針を水精霊目掛けて飛ばせる。が、針が刺さるより前に水精霊は水となり、地面に落ち広がる。風の針と球が消え、水精霊は再び己の形を象る。

「私も大人しく引き下がりたくはありませんの。魔女様?」

「そ。何かほざいてるところ悪いけど時間かかり過ぎちゃうと脱落させられるかもしれないから…手短に済ませよっか。」

「そうですか。」

水精霊の周りに巻き付いていた水の渦が5本程ミレナ目掛けて襲いかかってくる。

「防御」

その水流は目の前で止まり、静止された。

「風、刃」

ミレナの周囲の空気が震え、音もなく約30本の刃が生まれた。そして淡々と水精霊へと放たれる。それを見た水精霊はすぐさま上下左右へと逃げ回る。

(流石。平然と追跡魔法も付け足していますね。威力も強く、恐らく水壁を作っても壊されます。けれどこれぐらい、追跡魔法が解けるまで逃げればいいだけのこ、と…)

水精霊が逃げ回っていると、ふと真下に描かれている魔法陣に気付いた。

「まさかっ…!」

水精霊は薄い目を開けて真上を向くと、同じく魔法陣が空中に描かれていた。

(結界魔法、もう逃げられない。)

水精霊はミレナを見据えた。彼女は顔をこちらへ向けているだけで、蹲っていたあの位置から立ち尽くしていた。

(あぁ、私では一歩も動かせることが出来ませんでしたのね。)

「やはり、素晴らしいですね。魔女様。」

「あら、ありがとう。それとさよなら。」

描かれた魔法陣が発光する。

断罪の風(ヴェルド)

上下の魔法陣からは殺風が吹かれた。挟まれていた水精霊は一瞬にして上下からの攻撃で潰された。水精霊がいた場所からは光の粒子が静かに発生し、空気中に消えていく。

「久しぶりにこっちの型の魔法使ったな。それにしても…私の今の魔力量じゃ、現れるのは中位精霊なのね。チョットクヤシイ。」

口を膨らませて悔しがっていると、視界が白光に包まれた。そして目を瞑る。



「______会いたいよ。メイ。」


最後までお読みいただき感謝です!

作者は評価やブックマークをもらえると、めちゃくちゃ単純に「やったー!」って喜びます。

もし少しでも楽しんでいただけたら、ポチっと応援してくださると嬉しいです。


ちなみに次の更新日は20日の予定です。

ここまで謎ばかりかと思いますが、少しずつ明かしていくつもりですので、ぜひお付き合いください。


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