閉じ込められた!
リタの言葉と共に、その場を占める戦慄。誰も言葉を発していないが、空気が凍てつくほどの緊迫感。
ーリタの魔法が通じなくなったー。
これは一体何を意味するか。本部は、外からアクセスできない場所にある。ここにあるルートは魔法だけ。
つまり、魔法が復活しない限り……。
「我々はここに閉じ込められてしまったことになるのか」
陛下の声もさすがに震えている。
「ええ、残念ながら」
「なぜだ」
「よくわかりませんが……。私リタは、この世界で、最も強力な魔法使いです。その私の魔法が封印されているということは、私よりもっと強力な魔法使いがいる可能性があります」
その言葉でハッと、僕は思い出した。キシル山脈の森の中で、初めてイートン達と遭遇したときのことを。リタがイートン達の動きを制止したにもかかわらず、動いている存在があった。
「Aですか?」
僕はリタに尋ねた。リタはゆっくりとうなずいた。
「そうね、おそらく。彼女はイートン達を率いているだけじゃない。おそらく私よりも、はるかに強力な魔法使いよ」
その瞬間、ドサッという物音が響き渡った。音の主はレクサだ。
しまった。僕は慌てて彼女に駆け寄る。彼女の顔は真っ白で、息も荒く、手足も小刻みに痙攣している。
今まで見た中で、もっとも激しい発作だ。
僕はレクサの懐を探り、薬の瓶を取り出した。本来は一回一匙分だが、少し大目にレクサにふくませる。
「これを飲んで。呼吸は僕のカウントで」
「ごめんなさい」
皆が見守る中、やがてレクサは落ち着きを取り戻した。
「レクサ、この閉塞感のある場所は苦手だよね」
パニック障害の患者は、「自分の意志で自由に動けない場所」を苦手とすることが多い。たとえばバスの中、特急電車、高速道路、渋滞、映画館などだ。本部の窓もない作りで、閉じ込められてしまったとなれば、レクサへのストレスは多大なるものだろう。
「ありがとう。でも私がこうなったのはそれだけじゃないの」
「何」
横になっていたレクサは、上体を起こし、皆の顔を見渡した。
「皆様。Aが誰なのか、心当たりがあります。
Aは、私の妹です」




