最悪に近い、事態
僕は最悪の事態を覚悟した。
最悪ではなかった。
だが、最悪に限りなく近かった。
奥の部屋には、セルトラが横たわっていた。金髪の美しい髪も、眉間にほくろのある彫の深い顔も、飄々とした表情もいつもの通りだった。ただ、服は紅に染まり、
そして、左足が股の付け根から、無くなっていた。
「セルトラさんっ」
僕は彼に駆け寄った。彼は、小さく笑ったような気がした。
「す……、ま…ない」
「イートンに後ろから襲われて、ほんの一瞬だった。私の魔法でなんとか止血はしたんだけど、もうだいぶ出血してしまって」
リタが力なくつぶやく。こんなに気落ちしたリタを初めて見たかもしれない。
僕はセルトラの脈を確認する。微弱に触れるか触れないかといったところだ。しかし、確認している間にもどんどん弱くなっている。そして、明らかに身体が冷たくなっていく。精神科医だった僕でもわかる。
彼は、もう持たない。
どれぐらいそこにいただろうか。長かったようで、実際には数分だろう。そのまま彼は一言も発さなくなり、目から輝きが失せた。僕は彼が旅立ったことを確認すると、そっと開いたままの瞼を手で閉じた。
それから静寂が訪れた。各々の作法で、きっとセルトラを弔っているのだろう。僕も両手を合わせた。
やがて、現国王陛下ボルチが口を開いた。
「さあ、計画の練り直しだ」
彼の言葉は静かだったが、わずかに震えているのが僕にはわかった。




