まさか。
なぜなら、辺り一帯が血の海と化してしたからだ。イートン達はとっくに城壁を乗り越え、既にトレド城は戦場と化していた。そこに、漆黒の直径数メートルに及ぶ球体、イートンたちが口をバガバガと広げながら、ありとあらゆるものを食い尽くしている。イートンは以前遭遇したときより気無しか大きくなっているうような気がする。しかもイートンの数は、数えられないぐらいに多い。
奇襲を受けた兵士たちは、全く統率がとれておらず、各々がその場でイートンたちに反撃している。そのため、イートンに食い散らかされたと思われる手足や胴体の一部のようなものがあちらこちらに転がっている。
もう反撃するどころではない。ここにいたら危ない。
僕は小さくロドに耳打ちした。
「どうする」
その瞬間、真後ろに誰かの気配を感じ、振り向く。
「リタ!」
リタはすぐ僕の口に手を当てた。
「しっ。ト・フィソ・パム」
その瞬間、急に静寂が訪れる。まるで、これから寝ようとしていた数時間前のように。
「しばらくは、こいつらの動きは止めていられる。これから、本部に移動するよ」
「わかった。みんなは」
「本部にいるよ」
良かった。無事だった。
「ル・ラシド」
次の瞬間、僕たちは暗闇に包まれた。そして、暗がりが消えると同時に、僕たちは本部にいた。
「ここは!?」
隣で驚いていたのはロドだった。そうか、この場所は本来司令部のものしか知らなかったよな。
「大丈夫だ。ロド。ここは安全な場所だ」
「デュロ、良かった」
目の前にはレクサが立っていた。頬に擦り傷があるが、特に問題なさそうだ。
「レクサ、無事か」
「ええ」
他にも、ボルチ国王、クロン爺(いや先王と呼ぶべきか)、ルーラの姿が確認できた。皆多少怪我はあるかもしれないが、大丈夫そうだ。
「セルトラさんは?」
僕の問いかけに、皆視線をずらす。嫌な予感がする。
「セルトラさんは、こっちよ」
レクサが手を引いて、本部の奥に僕を引っ張っていった。
まさか。




