突然の物音
作戦開始前の宴は、夜通し開かれるとのことだった。本来ならば、皆の体力を考え、早めにお開きにしたほうが良いのだろうが、現国王ボルチはそう考えなかったようだ。宴が始まる前に、彼はこう言った。
「今回は大勢の人間が戦いに参加する。指揮を高めるために、思う存分飲み食いしたいものは、ここに朝まで残るが良い。そうでないものは、自分のペースで休まれよ」
と。
僕は、いつもよりやや少なめに食べたあと、早々に自室に戻った。その頃には、リタもルーラもレクサも会場からいなくなっていたから、さらに早く戻ったのかもしれない。僕の部屋は、トレドの城の、二番目に高い塔の片隅にある。決して広くはないが天井が高く、窮屈な感じはない。ただ壁が石壁のせいか薄暗く感じる。手を伸ばしても届かなさそうなところに、灯り取りの細長い窓が開いており、そこから「月」が見えている。その「月」が以前の世界のものと同じものなのか、全く違うものなのかわからないが、とりあえず僕は「月」と呼んでいる。「月」は満月だ。
僕は、その月をぼんやり眺めながら、明日の作戦について脳内で復習しはじめた。僕は、ルーラとレクサが率いる「非魔法使い」の部隊に所属する。前方をルーラが指揮をとり、後方をレクサがまとめる。僕は後方、レクサのサポートを行う。「非魔法使い」は移動が遅いので明日の朝、早朝に出発だ。
魔法使い部隊は、リタが指揮をとる。魔法使いは瞬時に移動できるもの、そうではないもの、長距離攻撃に長けるもの、そうではないものなど特性が様々だ。そのため魔法使いは能力に応じた細かいグループに分けて出発する。最後はイートンと謎の女性がいるキシル山脈の麓で合流することになっている。リタの報告によれば、彼らはレスリンの泉からだいぶ移動し、トレドの城から徒歩で数日移動できる辺りまで来ているようだ。僕は明日の起床時間と必要な物資を改めて確認し、ベッドの中に入った。当然緊張し、なかなか寝付けないかもしれないだろうと覚悟はしていたが、ほどなく夢に吸い込まれた。
……
……
……
……
……。
ドンドンドンドンッ!
大きな物音で、僕は何週目かの夢から急に追い出された。
扉をたたく音。まさか寝過ごしたか!?




