僕が呼ばれたわけ
蒼い唇。小刻みに震える身体。そして、浅く荒い呼吸。
パニック発作だ。
「レクサ、薬飲んで」
レクサは小さくうなずいて、懐から薬を出そうとする。しかし、手が震えてなかなか取り出せない。
僕は近くに駆け寄って、レクサの口に一口薬を飲ませた。
「呼吸が早いよ。もっとゆっくり。1,2……、そうそう」
僕の掛け声に合わせて、レクサが呼吸を整える。その場にいる皆が静まり返って、僕たちを見ているのがわかる。
「ごめんなさい、デュロ。こんなところで」
「いいんだ」
レクサが落ち着いたところで、セルトラが口を開いた。
「デュロさん、あなたが呼ばれたのは、その力です」
「力?」
「そう、アナタには不思議な回復の力があると、リタ様がおっしゃっていました。おそらくこの国の魔法ではない何かの力があると。そして、その力は、この国最強レベルの勇者である、レクサ様の力を発揮させるには必要なものです。ですからアナタは呼ばれたのです」
「でも、僕は一般人だ。戦闘の邪魔にしかなりませんよ」
セルトラは、鼻で軽く笑った。
「こんなに最強クラス、かつ大勢の部隊がいるのですよ。アナタを護衛しながら戦うなど大したことではない。安心してください」
少しセルトラが上から目線なのが腹が立つが、確かに彼の言う通りなのかもしれない。
「なるほど、あともう一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「何を?」
セルトラが少し訝し気に僕をみる。
「あの、前回のルーラの捜索で関わってくれたクロンは、今回同行しないのでしょうか?」
彼はただの酔っ払いの爺ではなく、実に頼もしかった。筋肉質で俊敏な動きはとても只者には思えない。また恐らく恋慕を伴うルーラへの忠誠心も強い。多少老いているとはいえ、今回の司令官としてはうってつけのはずだ。
「ああ、それは……その」
セルトラが言葉を濁した。
「それは彼が、ボルチ様のお父様だからだよ」
代わりに答えたのはルーラだった。
「なんだ、ボルチ様のおとうさ……、え、なんだって」
ということは。
「そう、クロン様は、先代の国王なんだ」




