国王の登場
「お久しぶりです。リタさん、どうして突然」
リタの両隣りには、少し困惑した表情のレクサと、やや緊張した表情のルーラが立っている。
「いつもいきなりで、悪いね。二人には今説明したところなんだけど、今から緊急事態省の会合がトレド城で開かれる。今回は、君たちも来てもらおうということになった」
「今から……ですか? これから今日チェックインする客の準備をしなければいけないのですが」
「デュロ、さっき今日の客には臨時休業だって連絡入れておいたよ。代わりに『メイラ』で受け入れてもらうことになった」
「そうですか、ルーラ」
普段のルーラなら、「状況をちゃんと説明しろ」と騒ぎそうなものだ。何か察しているのかもしれないな、と僕は思った。
「本当にすまないね。今回は国王のご希望でもあってね」
国王……!?国王は、ほとんどの人間にとって、見たことすらない存在だ。この国の国王は、儀式のときですら国民の前に姿を現さない。その国王が直々にお呼びになっているということか。
「じゃあ、時間もないので、すぐにトレド城に向かうよ。みんな私の近くに寄ってくれ」
僕はあわてて、リタの真横についた。
「クー・ビビック」
僕たちの周りが急に闇に包まれた。そしてわずか数秒後、ふわりと闇が消えていった。
闇に置き換わるようにして、絢爛豪華な、白亜の石で覆われた巨大な空間が現れた。周りには剣を携えた鎧で覆われた屈強な兵士がずらりと並んでいる。何十メートルもありそうな高さの天井から、鷲をかたどった金色の像が、大空を滑空するようにぶら下げられていた。鷲はトレドの国鳥でもある。
そして、足元には、全く足音もたたなさそうな、分厚い深紅の絨毯が引いてあり、部屋の奥に広がっていた。奥には階段が数段あり、そこを上がったところに、とても大きくて豪華な黄金の椅子が置かれていた。そこには誰かが座っていた。
これがトレドの王か。彼の前には大きな薄手の布の仕切りがあり、顔は見えないようになっている。王というからには、少しふくよかなイメージがあったのだが、意外にも屈強そうで引き締まった、現役の闘士のような雰囲気だ。
「皆のもの、ご足労だった。私がトレドの王、ボルチだ」




