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無能な僕はこの世界で、精神科医の夢を見る  作者: 精神科医Tomy
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信じられない隠し味

ルーラが出した料理は、甘味と塩気、香ばしさが混じり合って、とても美味しいものだった。


しかし、違った。

あのとき味わったものとはまるで違う。もちろん、朋美の肉じゃがを彷彿とさせることもなかった。

何が違うのかはよくわからないが、まるで別物だ。


「あの、いかがですか?」

ルーラが心配そうに僕の顔を覗きこむ。僕は、しっかり笑って言った。

「とても……、美味しいですよ」


「よかった」


彼女はホッとしたようで、純粋な笑顔を僕に見せた。

しかし、これは以前のルーラが持っていなかった表情だった。


「ねえ、ルーラさん。私二階にあるベッドのシーツを取りに行ってきますね」

ふいに、レクサが口を挟んだ。


「いや、私がやりますよ」

「いえいえ、ルーラさんはもし良かったら、キッチンの片づけをお願いしても大丈夫でしょうか?」


「あ、はい」


その発言に軽い違和感を感じ、レクサの顔をちらりと見ると、彼女が僕に目配せをしていることに気が付いた。


なるほど、そういうことか。


そして、僕は彼女の後をついて二階に上った。


「ルーラさんの料理、美味しくなかったんでしょう?」

「いや、そんなことはないよ。とても美味しかった。ただ」


「ちょっと違ったのよね」

「よくわかるね」


「あなたの表情を見ればね」


レクサは、少し照れくさそうだった。 


「それでね、もしかしたら、あの料理には隠し味が足りないんじゃないかと思って」

「隠し味?」


レクサは、少しいたずらな顔をして、後ろ手から小さな瓶を取り出した。その瓶の中には黒い液体が入っている。


「これよ」


この液体、なんとなく見覚えがある気がする。しかし、まさか。

「少しなめてみてもいいかな」

「うん、どうぞ。味が濃いから気をつけて」


僕は彼女から瓶を受け取り、器用に一滴指に付けた。

味わう前に、これが何なのか香りでわかった。しかし、その答えは信じがたいものだ。

そして、答え合わせをするように、舌の先を指に少しだけ触れる。


やはり、間違いがない。この液体は。

 


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