ルーラが持ってきたもの
ルーラが持ってきたものを見て、僕は一瞬固まった。それは、彼女がプラムを去った時、僕に残してくれたあの書置きだったからだ。
「あの、中身見ましたか」
しばらく間をおいて、ルーラは答えた。
「はい」
彼女は何か言おうとして、沈黙した。僕も何も言葉を出せなかった。そしてルーラが消えたあの日のことを思い出していた。この書置きには、僕へのルーラの想いが満ち溢れていた。精神科医でありながら、ルーラという人間を誤解していたことを恥ずかしく思い、そしてこんなに大切にされていたことに感謝した。あれはたった二週間ほど前のことだったが、もう何年も前のことに感じられた。
「あの、この手紙は、もしかして私があなたに書いたものなのですよね」
今のルーラは、とても申し訳なさそうに言った。
「そうです。でも、覚えていないんですよね」
「はい、残念ながら……」
その答えは想定できていたが、いざ聞くと心苦しく、切なく感じられた。
「これを読んだあと、あなたが作っておいてくれた料理を僕は食べました。それは信じられないぐらい美味しかったんです」
そう、朋美の肉じゃがを彷彿とさせるぐらい美味しく、僕はあのとき泣きながらそれを食べたのだ。
「料理………、っ!」
ルーラはそうつぶやいたあと、急にこめかみに手を当ててしゃがみこんだ。
「どうしたんですかっ?」
僕とレクサはほぼ同時にルーラに駆け寄った。




