彼女は知っている
「ルーラ、ここがあなたの家です」
久しぶりのプラムを前にしながら、僕はルーラに話しかける。ルーラはピンと来ない様子で、プラムを眺めていた。空は驚くほど高く、蒼く澄み渡っている。しばらくして、ルーラは小さくため息をついたかと思うと、手を伸ばして木製の扉に手を触れた。
「やっぱり、よくわかりません。ここが私の家?」
「そう、ここは村で一番昔からやっている宿で、あなたは何十年も経営していたんです」
一緒に来てくれたレクサが、ゆっくりと「Closed」の札をひっくり返した。
「レクサ、まだまだ早いよ。オープンするのは、明日からだ。今日は掃除しなきゃ」
「あ、そうか」
レクサは少し舌を出して、札をまた元に戻した。その茶目っ気のある仕草が、また朋美を彷彿とさせ、僕は静かに胸苦しくなった。
「じゃあ、中に入るよ」
戸を開けて中に入る。プラムに新しい空気が流れ込んできたのは、一週間ぶりになる。中はここを出発した時と、当然何も変わっていなかった。ただ一つの違いは、窓から差し込む光が、舞い上がる埃の中に、くっきりと浮かび上がっていたことだ。
「やっぱり掃除はしっかりしないとな」
僕は思わず咳き込みそうになった。
「えっと、デュロさんでしたっけ。まず、箒で床掃きましょうか」
ルーラはそう言いながら二階に向かった。
「あっ」
その様子を見て、思わずレクサが声を出す。僕はレクサの方を見ながら、口元に人差し指を当てた。
そう、ルーラはこの家の二階に箒があることを知っているのだ。




