さあ「我が家」へ
「手伝うって……?」
「ほら、ルーラおばさまの記憶がないうちは、人手不足になるんじゃないかなって」
気のせいか、レクサはうっすら頬を赤らめているように見えた。
「でも、ほらメイラの方は?」
「うん、こんな状況だし、事情を説明すれば了解してくれると思うわ」
実は家に帰ったらプラムを再開するのか、僕はまだ決めていなかった。
しかしルーラの記憶を取り返すためには「日常」が必要だ。それを考えると、元のようにプラムを経営したほうがいい。そして、今までは僕とルーラが一生懸命に朝から晩まで働いて、やっとなんとか回っていた。それを考えると確かにレクサの申し出はありがたかった。
「別にお給料とかはいらないわ。ただ、私の『呪い』の治療も手が空いたときにやってくれたら、それだけでも充分すぎるし」
僕はレクサの顔を改めて見つめた。こうやって真正面から彼女の顔を見るのは、なんだか久しぶりに感じる。確かに彼女のパニック障害は、まだまだ不安なところがある。少しずつ村の外に出る暴露療法を進めるのにも良い機会だろう。
ただ僕には、「はい」と言い切れない何かがあった。それはレクサに朋美の面影があるということによる。僕は、レクサに好意が湧いてきていることを自覚しつつあった。しかし、僕の心の奥には朋美がいる。彼女になんとかして会いたい。元の世界に戻りたい。具体的な方法は何一つ思いつかないが、それだけでやってきたのだ。
なのに、レクサに好意を抱くというのは、なんだか朋美に対する裏切りのように感じられた。そして、自分自身を裏切っているようにも思える。そして、もし、単に朋美の面影があるという理由でレクサに好意を抱いているのなら、レクサに対する裏切りにもなる。
だから、レクサに向き合えなかったのだ。
「あの、迷惑かな」
レクサが心配そうにのぞき込む。そしてその瞬間、朋美の笑顔が頭に蘇ってきた。
「昇はさ、そうやって考えすぎるところだけが難点だよ」
彼女がよく僕に言っていた言葉だ。確かにウジウジ考えすぎても仕方がない。付き合おうというわけじゃないのだ。
「うん、ありがとう。お願いするよ」
「わかった」
レクサの顔がぱっと明るくなった。
「おーい、みんな。多分今日中に、村に着くぞ」
ゾロが少し明るい声で言う。
さあ、帰ろう。我が家へ。




