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無能な僕はこの世界で、精神科医の夢を見る  作者: 精神科医Tomy
Journey

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ルーラの悩み

「実はルーラは、数年前からある異常が出現してな。

 それで(わし)はずっと相談されていたんじゃ」


「異常? 僕は全く気が付かなかったです」

 最近の思い出してみたが、ぶっきらぼうで口が悪く、忙しそうにしているルーラの姿しか頭に沸いてこなかった。そしてそれは、僕が転生してから見てきた彼女の姿と、何も変わらないように思えた。


「まあ、心配させたくなかったんだろう。ルーラはそういう女性(ひと)だからな。

 で、その異常というのは『時々自分の記憶が抜ける』というものだった」


「そんな、ルーラさんはまだそこまでの年齢ではないですよね」

 レクサが驚いて口を挟む。


 この世界では、年齢を重ねることで認知機能の低下が進むことは一般的に知られている。もちろん、アルツハイマー型だとか、認知症だとか、「疾患」としての概念はない。加齢に伴う「()け」として解釈されていている。


「うむ。だから、ルーラは何か呪いか、病気のようなものかもしれないと考えていたようだ。

 ただ、デュロに心配させたくはないと言っていた。だから、誰にも言うなと言われていたんじゃ」


 なるほど。だから「私を探すな」と書置きに残していたのか。僕はルーラの気持ちを想像し、心臓の奥がキュッとなった。そして、この話を聞いて、なぜルーラが失踪したとき、プラムの異変にすぐクロン爺が気が付いたのかも理解ができた。


「とすると、ルーラがレスリンの泉に来た理由は、『因縁の場所だから』というだけではないですよね」


 クロン爺は(うなず)いた。


「そうじゃ。レスリンの泉を飲めば、自分の異常が治るかもしれないと思ったはずだ」


 やはり、そうだったのか。クロン爺は、ルーラの気持ちを優先して、隠し事をしていたのだ。しかし、一つ気になることがある。


 それは、僕の診立てでは、彼女は認知症ではないということだ。そして、それを証明するためには、ある簡単な検査を行っておきたい。ただここには、検査するためのキットがない。だから僕は記憶の糸をたどることにした。


 幸い、僕は記憶力がいい。覚えるつもりがなくても、人生の瞬間瞬間を写真のように覚えている。いわゆるフォト・メモリーというやつだ。そして、この能力は、なんと僕が転生する前の記憶も呼び起こせる。


 さて思い出すとしよう。以前の世界で、僕が精神科医だった頃。いやその前の研修医時代から使っていたあの検査。その内容は。


 自分の中に過去の記憶が蘇る。


 

 

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