唯一の家族、ルーラ
「おいっ、どうするよアレ」
ゾロが困惑したように言う。
「そりゃ、助けなきゃ」
レクサも、珍しく少し自信なさげだ。
皆の反応を見ているうちに、僕は気が付いた。
誰も彼女がルーラだと気が付いてはいない。
それもそうだ。彼女は、勇者の甲冑を着ている。剣もおそらく腰元に携えているように見える。仮面も被っている。普通に見たら、ここからでは性別すらわからない。
「みんな、あそこに倒れているのは、ルーラだと思う」
僕は努めて冷静に言ったが、各々の驚きは止められなかったようだ。
皆口々に驚きの声を上げる。
「よく、あれがルーラだとわかったな」
「ええ、クロンさん。昔彼女は勇者だったんでしょう。きっとそのときの恰好ですよ」
きっと皆の頭の中には、宿屋の厳しい女主人、ルーラのイメージしかなかったのだ。でも僕にはわかる。彼女がルーラだと。
僕はほんのりと、以前の世界のことを思い出した。どんな遠くからでも、朋美の後ろ姿だとわかった。大勢いる中から、彼女の足音を聞いても、きっとわかる。だって、それは家族だから。
あんな恰好をしていても、わずかに漏れ出てくる気配や風情から、僕にはルーラだとわかる。そして、彼女がこの世界での僕の「家族」なのだ。
そして、ゾロは、ゾロゾロ号をルーラの近くまで動かした。到着するや否や、僕は考える間もなくゾロゾロ号から駆け下りていた。
「ルーラ、ルーラああああ」
甲冑はとても重く、仮面は固かった。僕は手を血だらけになりながら仮面をはがした。
そして、その中には紛れもないルーラの顔があった。意識はなさそうだが、血色はある。
そして、わずかな呼吸の気配があった。
「生きてる」
僕の声を合図に、皆がルーラの名を呼び、身体を揺り起こし始めた。意識がないときに身体を闇雲に動かすべきではないのだが、もう収集がつかない。
そして、彼女の目がゆっくりと開けられた。
「ここは……?」
「ルーラさん、無能……いや僕です。デュロです」
ルーラが僕の顔を訝し気に見る。その表情に僕の喜びの感情に一点、不安の雫が落ちた。
「デュロ? 誰?」
ルーラはつぶやいた。




