限界
「大変です。一匹こっち向かってきますよ」
僕の言葉に、ゾロが振り返る。
「うわ、ヤベえ。逃げるぞ」
ゾロは、慌ててゾロゾロ号を始動させようとする。しかし、手元がもたついているようだ。
その間にも、「歯」はあっという間に近づいてきた。
「間に合いません!」
僕がその言葉を言い終わる頃には、既に「歯」は口を開いて、ゾロゾロ号にかみつこうとしていた。
「レンボ・キサント」
そのとき、耳に聞こえているのか、頭の中に響いているのかわからないような感覚で、声が鳴り響く。
そして次の瞬間、
パキーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
金属バットでホームランでも打ったかのような音が鳴り響き、先程僕たちに食らいついたはずの「歯」は上下左右に、苦しそうに飛び転がっている。よく見ると、歯が大きくひび割れているようだ。欠損しているところもある。
あっけにとられている僕達の目の前で、しばらくもだえ苦しんでいたあと、「歯」は離れていった。
「危ないところだったねえ。ゾロや、お前はやっぱり私無しではだめなんだねえ」
気が付けば隣にリタがニヤニヤしながら座っていた。やはり彼女の呪文だったのか。
「おおおお、お前。いつの間に」
普段悪口ばかり言っている癖に、妻を目の前にしたときのゾロの顔は、「ベタ惚れ」であることをこれでもか、これでもかと指し示している。
「お前さんの作るおもちゃ、全然強度が足りない。アタシの呪文で一瞬だけ固くしてやったけど」
なるほど、そういうことか。
「うるさい。いつも俺のこと否定ばっかしやがって。ところでよう、この化け物たちどうするんだい」
「数が多すぎるね。これ以上は粘れないわね」
そして、彼女はすっとゾロゾロ号の外に出て、ふわりと宙に浮かび上がった。
「ト・フィソ・パム」




