56/112
咀嚼
「やはり、こうなっていたか……」
「リタさん、知っていたんですか?」
僕は思わず聞き返した。
「あのときと、同じじゃな」
リタは答える前にクロン爺がつぶやく。あのとき……?
僕がまた口を開こうとしたとき、僕は妙な音に気が付いた。
しゃぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃぐ………
これは、
咀嚼音?
どこかで聞いたことのあるような。
そうだ。スイカを思い切り頬張るときのような。そしてその音が徐々に大きくなっていくような。
「皆のもの、来るぞ!」
クロン爺は大きく叫んだ。「何が?」と僕も叫ぼうとしたとき、急に顔に影がかかるのを感じて僕は見上げた。そこにあったのは、
巨大な歯。それは、巨大な、巨大な。
そして僕の周りは完全な闇になった。
と思いきや、すぐに視界の隅から光が差した。それは、太陽のような力強い光だった。
そこを中心に闇はずたずたに切り裂かれ、僕は再び外界に出た。
そこで僕が目にしたものは。




