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無能な僕はこの世界で、精神科医の夢を見る  作者: 精神科医Tomy
Journey

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穏やかすぎる旅

 こうして、僕たちの、ルーラを巡る旅は始まった。ルートは単純で、デエビゴの村からひたすら南下してキシル山脈に向かうだけだ。途中分かりづらいところは多少あったものの、レクサの案内で特に迷うこともなく進んだ。僕の暗示が効いたのか、レクサの発作も特に起こらず、旅は順調だった。また、魔物と遭遇することも無かった。


 昼は森の中を淡々と進み、夜は適当なところでゾロゾロ号を停めて寝る。ただそれだけの、ルーラを捜索するという目的でさえなければ、まったりとした旅だった。


 そんな感じで、既に5日ほど経過していた。


「さあ、今日はこのへんで野営にするぞ」

 もうすっかりリーダーが板についてきたクロン爺が声を上げる。


「ほい、了解」

「ゾロさん、今晩の料理は私がやりますよ」

「いいから、いいから。レクサちゃんは、大切な勇者。戦いの練習をしていて」

「そう……?申し訳ないです」


 そして、野営設営はゾロが担当になっている。レクサが最初はりきってやろうとしたのだが、あまりにも不器用で、様々なものが壊れかけた。また、料理をお願いしたときは、紫色でドロドロの謎の食べ物が出来上がり、一口食べた瞬間、皆が無口になった。


 戦いの才能と、家事の才能は全く別のようだ。


 「さあ、皆さん。飯ができたぞ」

 

 数十分後、即席のテーブルの上には数々の美味しそうなものが並んでいる。肉や魚、果物、スパイス、甘味、辛味、旨味、様々な匂いが調和を伴って、湯気とともに、広がる。


 実は、ゾロの料理はとても美味しい。朋美の肉じゃがや、ルーラ失踪時の料理には叶わないが、それに次ぐぐらいの美味しさだ。しかも、何を作っても安定して美味しい。


 食後は、なんとなく皆が焚火を囲んで、団欒(だんらん)の時間になる。この時間、木々の狭間から覗く空は、闇と夕闇が混じって虹のように美しい。そして段々と闇に飲まれ、今度は宝石をちりばめたような星空へと変貌していく。


「デュロ、今日も素敵な星空ですね」

 いつの間にかレクサの定位置は、僕の左側だ。


「そうですね。ついつい旅の目的を忘れそうになる」


 本当にここまでは順調だ。あまりにも順調すぎて、心配になるほどだ。


 その瞬間、木々がザワザワと大きく音を立てて揺れ、ギャアギャアという何かの叫び声が響き渡った。

 


 

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― 新着の感想 ―
文章上達も願い、毎日欠かさずTOMY先生の作品を、写経ならぬ写文しています。すると心がおちつきます。
2025/09/02 15:25 いきじしろぬ
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