45/112
悲しい過去
そこまで聞いて、さっきのリタの言葉が頭に浮かんだ。
「えっ、じゃあ『緊急事態省』が初めて招集されたときというのは……」
「うん、そう、デュロ。この時だ。そして、真っ先に名乗りを挙げたのが、当時一村人に過ぎなかったルーラだ」
「なぜ、ルーラが……」
「それは……」
クロン爺が言い澱む。
「それは?」
「ルーラは昔、夫とまだ幼い息子を魔物に襲われたことがあるんじゃ……」
そうか。夫と子供が家を出ていったという噂は間違いだったのか。
クロン爺は、言葉を続けた。
「ルーラは、ある日、家族と共にレスリンの泉に出かけた。魔物はいるが、当時あのあたりは安心して遊びに行ける場所だと思われていたんじゃ。ただ実際にはそうじゃなかった。
捜索隊が彼らを発見した時、ルーラだけが辛うじて息があった。当たり前だが、本当に彼女は辛そうでな。幼馴染だった儂は、何と声をかければいいのかわからんかった」
僕は、クロン爺の目の辺りが少し赤くなっていることに気が付いた。




