パーティー結成
僕も含めて、皆がレクサの方を見る。幸い、すっかり回復しているようだ。
「『緊急事態省』?、聞きなれない名前だな、おい。俺はなーんにも知らなかったぜ」
「ふん、お前さんみたいな、ポンコツに言ってもしょうがないからな」
また夫婦喧嘩が始まりそうな雰囲気になってきた。
「まあまあ、二人とも。
緊急事態省は普段は表立って出てこないんじゃ。ただ、メンバーは決まっていてこっそり活動はしている。何かあったときだけ招集されて国の指揮を執るんじゃ。
儂の若い頃、一度だけ招集があっただけだから、若い人はその存在を知らんだろうな」
「クロン爺の言う通りだ。おそらく間もなく正式に招集されるだろう。
というわけで、私はルーラの捜索には参加できないのだよ」
「そうなんですね。残念ですね。リタさんの魔法があれば、キシル山脈を越えるのも楽だと思っていたのに」
ふとルーラのことをが頭をよぎる。彼女は、今どこにいるのだろうか。無事でいてくれるのだろうか。
「大丈夫だよ。レクサは強い。多分お兄さんたちが考えるより、ずっと、ずっと」
「お兄さんじゃなくて、デュロです」
自分が名乗ろうかどうか考えていたら、なぜかレクサが代わりに答えてくれた。
「おっと失礼。良い名前だね」
「でも、私は今……変な呪いにかかっていて」
リタが何かもの言いたげに僕とレクサの顔を交互に見る。
「いや、このお兄……デュロくんがいれば、レクサは大丈夫だ」
「そうですか……、でも今なぜ発作が起きたのだろう。この村の中で起こしたことはなかったのに」
レクサが自信を失っている。パニック障害の患者さんにとって、「また起きたらどうしよう」という予期不安が最大の敵だ。
「大丈夫。今回は特別なんだ。もう大丈夫だよ」
「本当に? 信じていいんですか」
「うん、今回レクサが発作を起こしたのは、この、ゾロのおやじのせいだ」
「お、おれがあああ!?」
ふいにとばっちりを受けて、ゾロが大声を出す。
「レクサ、君は小さい頃、家族を魔物に襲われたことがあったと言っていた。
ゾロが身代わりのリタの遺体を見て、悲しんでいる光景。
それを見て過去の記憶が蘇ったんじゃないのかな。だから、呪いが悪化しているわけじゃないんだ」
レクサの表情に安堵の色が見えた。
多少根拠があいまいでもいい。しっかり大丈夫だと保証して、信じてもらえれば良いのだ。
「おや、レクサ。デュロくんに、そんな生い立ちまで話しているのかい。いつの間にか、良い仲になっていたとはねえ」
ニヤニヤしながらリタが言う。
「ちが……」
傍目にわかるほど、レクサの顔は真っ赤になった。僕はそれを見て、朋美のことをふっと思い出した。
「まあ、というわけで君たちでルーラを探しに行ってくれ。私はもう行かなければならない。
君たちもあまり時間はないだろう。早く準備して向かいなさい」
リタの言葉が言い終わらないうちに、彼女の色がすっと薄くなり、完全にこの場から消えてしまった。
「じゃあ、儂、ゾロ、レクサ、デュロ、我々でパーティー結成だな。では、ルーラを探しに行こう!」
クロン爺が年齢を感じさせぬ張りのある声で、意気揚々と声を上げた。




