魔法
血に埋もれたリタの亡骸。そして彼女を抱きかかえるゾロ。
ただその光景を眺めているしかない僕達。
この無限にも感じられた時間を止めたのは、一つの影だった。
ゾロとリタの上から覆いかぶさる影。そして、その影は徐々に大きくなっていく。
「エス・シタロ・プラーム」
ふと空から声が響き渡る。僕も含めて皆声の方を見上げた。そこには信じられないものがあった。
そう、そこにあったのは
今亡骸を目撃したはずのリタの姿。宙に静止した彼女は僕達の顔を見て、一瞬ニヤリと笑ったかのように見えた。
そして、次の瞬間、リタの亡骸がはらはらと小さな塵となって消滅していった。数秒もすると、血の海も含めて何もかもが消失した。
口をぽかんと開けているゾロの正面に、ゆっくりとリタは降りていく。
「おやおや、舐められたものだ。この私が、こんな雑魚にやられるとでも思っていたのかい。
やっぱりお前さんはポンコツだねえ」
リタは優しく両手をゾロの肩に置いた。
「リタ、リタあああああああ」
今度は喜びの涙に、顔がぐしゃぐしゃになるゾロ。口は半開きになり、笑顔と涙と鼻水が混じったゾロの顔は、愛と希望そのものに見えた。僕はその素直な表情を、その表情を大切な人に見せられるゾロを、一瞬羨ましいと思った。
「おばさま、相変わらず見事です。身代わりの魔法を使ったのですね」
レクサの言葉に、僕は驚く。




