安否
「シャドウか……。その名前、儂は久しぶりに聞く。ん、ということは?」
「そうです。すぐゾロさんの店に行かないと」
レクサは、言うや否や、防具屋の方に向かって駆け出した。
同時にクロン爺も駆け出そうとしたが、バランスを崩してよろめく。
「くそっ」
「クロンさん。兄ちゃん。俺たちは、こいつに乗っていこう」
いつの間にかゾロはゾロゾロ号に乗り込んでいた。クロン爺と僕も、彼に誘導されるままに乗り込む。乗り込んだ瞬間、ゾロゾロ号はガクンと揺れ、急発進した。
「うお」
予想外のスピードだ。僕もクロン爺も、シートの上部の取手に必死にしがみつく。何度か村の交差点を急旋回し、やがて防具屋が見えてきた。
窓から見える防具屋には、立ち尽くして足元を見下ろすレクサの姿。何かが転がっていた。僕達の方に気が付いたレクサが、悲し気に此方を見る。
「くそ、ダメだったか!?」
クロン爺が叫んだ瞬間、ゾロゾロ号は停止した。
ゾロ、僕とクロン爺は、転げり落ちるように降りた。
「だめ、こっちに来ないで」
レクサの悲痛な声がする。しかし、その言葉を守る者は誰もいない。
その数秒後、僕たちは物言わぬリタを目撃することになる。
彼女は防具屋の前に倒れていた。頭部から胴体にかけて、左側が綺麗な弧に削り取られていた。
血の海であることにも臆せず、ゾロは跪いて、亡骸を抱き寄せていた。
最早声は出ない。ただゾロの背中が、ずっと震えていた。
僕達も、何も言えなかった。その時間が無限にも感じられた。




