リタの正体
「みんな、私のところまで下がって」
ふと見ると、横にいたはずのレクサがいない。レクサは、いつの間にかゾロゾロ号から3mほど下がったところまで移動していた。腰に携えていた剣を構えて。剣からは真紅の血がツーと垂れている。
「レクサ、何をするんだ。リタあああああああ」
ゾロは、大声で泣きわめいている。喉がやられたのか、辛うじて聞き取れるぐらいに、声が不明瞭になっていた。
「そいつはリタじゃない」
レクサの言葉に皆ハッとしてずり下がる。首を切られたにもかかわらず、リタの身体は倒れていない。そして鋭利に切られた首の断面から、何やら真っ黒な肉塊が、びゅくびゅくと膨れ上がってきた。
やがてその肉塊は無数の触手となり、その一本が僕の方に向かってくる。ここまで来るのに、スローモーションのように見えたが実際にはほんの一瞬だ。
ああ、僕は死ぬのだ。
そう思った瞬間、僕は頬に風を切るひゅんとした圧を感じた。そして、重力に従って地表に落ちる真っ黒な触手。
はやい。
レクサは凄まじいスピードで、上下左右、まるで蜂の群れが対象を襲うように「リタ」と戦う。その動きがあまりにも軽やかで、そのスピードにも関わらず風に舞う、たんぽぽの綿毛のようにすら見える。
気が付けば全てが終わっていた。誰一人傷もつかず、呆然とその様を見ていた。
そして「リタ」だったはずのものは、胴体も、首も、触手も、全てが黒い粘液のようになって溶けていた。
「これは、『シャドウ』という魔物です」
レクサは汗一つかかず、冷静な口調で言った。




