旅の始まり
「レクサ………」
「おお、どこかで見たことがあるな。お嬢ちゃん」
レクサは軽く頭を下げた。
「『メイラ』のレクサです」
「ああ、そうだそうだ。いつもと雰囲気が違うから………」
そう、クロン爺の言う通りだった。メイラが休みだったこともあるのか、化粧気がない。そのせいかいつもより凛として、眼光には狼のような鋭さがあった。これが本来の彼女なのだろう。
「私、実はミルタザの出身で、ここまで流れ着いてきたんです」
「えっ、じゃあ、あのキシル山脈を越えてきたというのか。独りで?」
「ええ、まあ」
クロン爺はぽかんと口を開けて驚いている。まあ、無理もない。普通の人間なら、独りであの山を抜けるは自殺行為に等しい。
「そのときにレスリンの泉を見つけました。そのとき、急に気分が悪くなって、休むところを探していたんです。そうしたら、エメラルド色に輝く池のようなものがあって」
「それがレスリンの泉だというのか」
「はい、噂の場所にほぼ一致しますし、私は思わずその水を一口飲んでみたんです。そうしたら、気分が良くなって」
なるほど、パニック発作の前兆のようなものは、そのとき既に出ていたのかもしれない。
「レクサさん、その場所はわかるかな」
レクサはちょっと考えて、こくりと頷いた。
「多分、私なら案内できると思います」
「よし、我々で、ルーラを探しにレスリンの泉に行こう」
「はい!」
力強く同意するレクサに、僕は思わず口を出さずにはいられなかった。
「ちょっと待ってくれ、レクサさん。君はまだ………」
僕の表情を見て、レクサは茶目っ気たっぷりに唇に人差し指を当てる。
ああ、また朋美の顔だ。
「大丈夫、きっとアナタがいるなら」
「え」
そうか、僕も行くのか。戦闘能力0の僕が。
「そういえば、アナタの名前まだ知らなかったわ」
ふと思い出したように、レクサが言う。
「そういえば、儂もしらんな」
「僕は、デュロといいます」
「デュロ………、凄く素敵な名前」




