来客の正体
この時間、まだ宿のチェックインには早い。一体誰だろう。
訝し気に受付に向かうと、そこにいたのは、クロン爺だった。
いつになく落ち着きがない様子に見える。
「ああ、クロンさん。まだ居酒屋としてはオープンしてないですよ」
「そうじゃない。あの、ルーラさんはどうしてるかね」
「ルーラ………」
ルーラの手紙の「私を探すな」という言葉が頭をよぎる。
「どうした、何かあったのか」
「いや………」
ルーラさん、ごめん。約束は守れない。
「あの、いなくなりました」
「いなくなった!?」
カウンター越しにクロン爺の両腕が伸び、僕の胸倉をつかむ。
その節くれだった枯れ木のような腕からは想像もつかないほど、強い力だった。
引っ張られた際に、服の襟が首にひっかかって、僕はせき込んだ。
「おい、それはどういうことだ!?」
「クロンさん、落ち着いてください。朝起きたら、ルーラさんがいなくなっていて、これがあって」
僕は、ルーラの手紙をクロン爺に渡した。彼は、手紙を食い入るように読んでいた。その眼差しを見て、僕はクロン爺がルーラを好きだという噂が真実だとわかった。
「なあ、兄ちゃん」
「デュロといいます」
「そうか、デュロくん。探すぞ。
ルーラを村総出で探すぞ。まずみんなに伝えよう」
「はい」




