真意
この思いも寄らぬ反応に、僕はわかりやすく狼狽えてしまった。
「あ、あの。お暇といっても、ちょっと一時的にトレドの城へ奉公に出ようかという話でして………。上手くいったら、王家とのつながりもできるかもしれませんし。
それに、ちゃんとすぐ帰ってきて、今まで通りできる限りお手伝いはさせていただきますから………」
自分でも嫌になるぐらい狼狽えて、訊かれもしないのにペラペラと話してしまった。何度も頭の中でシュミレーションして、覚悟を決めたはずなのに何というザマだろう。
「いい」
僕の狼狽を断ち切るように、女主人は一言だけ放った。
「別に無理して手伝わなくてもいい。お前が外に出たいのなら、出るがいい。
私は何も言うつもりはない」
これは、ここから出ていけということか。そういうことなのか。
もちろん、それはそれで想定済みだ。行く宛てはないが、何とかするしかない。
「わかりました。今までありがとうございました」
僕はまた土下座をしようとした。その瞬間、女主人は右手を伸ばして僕の動きを制止した。彼女の節くれだった細い手が、擦り切れた服の袖から伸びた。いつになく女主人が弱弱しく見えた。
「何か勘違いしていないか。お前は、ずっとここにいていいんだ。
そして、好きなことをやってもいい。
私は今日から、何もお前の行動を制限しない。
もちろん、手伝ってくれてもいいさ」
そして、豪快に笑いながら、部屋を出ていった。
一体、何が起きたんだ。
あまりのことに、僕はこの先どうしていいのかわからなくなった。




