表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能な僕はこの世界で、精神科医の夢を見る  作者: 精神科医Tomy
Start

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/112

戦略と計画

「おい」

 翌朝、僕はまどろむ暇もなく、いきなり女主人に頭をこづかれて目が覚めた。


「いつまで寝てるんだよ。この無能」

「あ、すいません。今すぐ支度します」

 

 女主人は返事もせず、ドスドスと足音を立てて降りていった。朝食の入った麻袋は持ってきてくれたようだが、今日は食べる時間はないだろう。それにしても女主人の足音でも目が覚めないなんて初めてだ。少し夜更かしたせいだろうか。

 僕はさっさと支度をすませ、いつものルーティンの仕事に入る。黙々と身体を動かしながら、レクサの治療について改めて考えてみる。薬の調合に関しては、問題ない。夜女主人が寝付いたあとに、調合する時間は確保できるだろう。

 ただ問題は、認知行動療法や暴露療法だ。今の生活の中ではとてもそれをする時間がない。この世界では抗うつ薬は手に入らない。お守り代わりの「抗不安薬」だけで、レクサの症状が改善するだろうか。いや、無理だ。多少は外に出られるようになったとしても、勇者として再び冒険ができるように持っていくのは至難の業だ。

 では、どうやったら治療の時間が作り出せるのだろうか。この家にいる限りは、夜の時間を除いて、ひたすら女主人の監視の元こき使われる。僕は、赤子の時にここの女主人に拾われた。それからずっと僕はこの家から出してもらえていない。休憩時間も自由時間もない。

 するとやはり、お(いとま)をもらうしかないのか。僕はそこまで考えて、大きくため息をついた。この世界に生まれてこの方、女主人に反抗はおろか、物申したことはない。一体彼女がどんな反応をするのか想像もつかない。

 やはり、僕特製の「抗不安薬」まで作って、あとは諦めるしかないのか。しかし、僕の脳裏には、レクサの大粒の涙が焼き付けられていた。そして、僕に話をしたあとに見せた、朋美を彷彿(ほうふつ)とさせる笑顔。


 いや、ダメだ。なんとかしてやりたい。


 僕がこの世界で諦めていた、精神科医として人の役に立つこと。やっとその道が見えるようになってきたのだ。中途半端なことはしたくない。女主人にこき使われるだけの人生は嫌だ。しかし、女主人と対立するのも良くはないだろう。何せ、まだ勝手のわからない世界だ。誰かと無駄に対立することは望ましくない。

 女主人にお(いとま)をもらうにせよ、戦略と計画(プラン)が必要だ。そこまで考えて、僕はあることを思い出した。一週間ほど前に、ゾロのおやじが言っていたことを。


「あのな。最近、トレドのお城で、使用人募集しているらしいぞ」


 これだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ