女勇者の慟哭
今度は、村から歩いて1里ぐらい行ったところで発作が起きました。しかもそのときは魔物にすら遭遇していなかったんです。
森の中で歩きながら、前日の発作のことをほんの一瞬、考えたんです。そうしたら、その思いが夕立前の黒雲のように一気に広がってきて………。
あ、いけない。考えるの止めなきゃって慌てて打ち消そうと思いました。でももう遅かった。
その黒雲は、1が10となり1000となり、あっという間に私を取り囲みました。呼吸がまたできなくなって、その場に私は座り込んでしまいました。呼吸困難感、激しい発汗と動機、手足の痺れと痙攣。何よりまた発作が起きてしまったという絶望感。その中で、私は「私はここで死ぬのかもしれない」とぼんやり思いました。
その発作が落ち着くまで、数分ぐらいだったかもしれません。でも、実際には数時間にも思えました。何とか動けるようになった私は、駆け出していました。一刻も早く、この村に帰れるように。
そして、それからもう1年以上も経ちます。何度も私はこの村を出発しようと思うのですが、「またアレが起きたらどうしよう」と恐怖に包まれ、出発できないのです。そのうちに「出発しよう」と考えることすら怖くなってきました。
その間私は「メイラ」の宿屋に滞在していたのですが、蓄えも無くなってきました。それで先月ぐらいから「メイラ」の酒場で働くことにしたんです。
そこでお客様としてよくいらっしゃっていたゾロさんが、あなたのことを教えてくれたんです。
ゾロさんは、あなたのことを「呪いを解除できる特別な僧侶だ」と言っていました。お願いです。私を、また旅に出られるようにしてください。
臆病者で、どうしようもない私がまた勇者に戻れるようにしてください。
私の人生には、これしかないんです。これしか………。




