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選ばれなかった私
地上に降りた瞬間だった。
「デュロ」
レクサが駆け寄ってきた。
迷いのない足取りだった。
まるでずっとそこへ向かうと決めていたみたいに。気がつくと、僕はレクサを抱きしめていた。
温かい。
確かにそこにいる。
その感触を確かめるように、腕に力が入る。
その瞬間、背中に刺さるような視線を感じた。
朋美だ。
わかっていた。わかっていたのに、僕は彼女の顔を視界に入れることができなかった。
静かな声が聞こえた。
「そうなのね。やっぱりそうよね」
力のない声だった。
僕はゆっくりと、朋美の方へ視線を戻した。
朋美の頬を、大粒の涙がいくつも伝っていた。
次から次へと溢れ、止まらない。
「こんな私じゃ……好きになれないよね」
胸が締めつけられる。
けれど僕は、何も言えなかった。
言葉が見つからないんじゃない。
言えば、何かが決定的に壊れてしまう気がした。
その時だった。
朋美がふと顔を上げた。
涙で濡れた瞳が、まっすぐ僕を見る。
「昇」
その声には、さっきまでの弱さがなかった。
「もうあなたは、私といる気がないでしょ」
僕の背中に、冷たいものが走る。
「だったら、私はこうするしかない」
嫌な予感がした。




