ある気付き。
セナの高笑いが、いつまでも耳に残っていた。
僕は、その音の中で呆然としていた。
これが、本当に朋美なのか。
脳裏に浮かぶのは、あの頃の温かな日々。
他愛もない会話。
笑い合った食卓。
夕焼けの帰り道。
その中の彼女と、目の前で世界を消したと語るセナが――どうしても同一人物に思えない。
「じゃあ……」
声が震える。
「レクサのいた世界は、もう……」
セナは、あっさりと言った。
「そう。どこにもないわよ」
一拍置いて、微笑む。
「姉さんたちもね」
頭が真っ白になる。
「嘘だっ! さっきリンクの先にあったじゃないか!」
叫ぶように言うと、セナはため息をついた。
「おバカさんね。さっきのは、ただのデモンストレーション。
私の力を、わかりやすく説明するために作っただけ」
僕は両ひざから床に落ちる。
じゃあ。
レクサも。
ルーラも。
リタも。
クロンも。
ゾロも。
みんな――いないのか。
胸が、潰れる。
あの時間は何だった。
あの戦いは。
あの約束は。
全部、消えたのか。
――そのとき。
脳裏に、ひとつの光景がよみがえる。
この世界に来てから、突如として目の前に現れた小さな薬瓶。
そして。
前の世界から戻る直前、レクサが言ったあの言葉。
「薬の瓶、それを覚えておいて。お願い」
なぜ、あんなことを。
あのときは意味がわからなかった。
だが今――
全ての点が、一本の線につながる。
僕は、ゆっくりと立ち上がった。
「セナ」
声は、もう震えていなかった。
「君は、何かを勘違いしているかもしれないよ」
セナの眉が、ぴくりと動く。
「何ですって?」




