希望なのか?
「リンク……じゃあ、この先に進めば戻れるのかっ」
自分の声が、思ったよりも軽く響いた気がした。
期待を隠しきれない声だったのだろう。
セナは小さく息を吸い、首を横に振った。
その動きは静かで、ためらいを含んでいるようにも見えた。
「残念ながら、それはできないの。
……いえ、進むことはできるけれど、戻れないわ」
「戻れない?」
言葉を反芻するように、もう一度口にする。
光の道を見つめると、確かに――戻る、という概念そのものが存在しないようにも思えた。
「そう、戻れない。一方通行なだけよ」
一方通行。
その言葉が、空間に落ちて、ゆっくりと沈んでいく。
僕は少し考えたあと、肩の力を抜いた。
一方通行でもいいじゃないか。そう思った。
この先に行けば、レクサに会えるのだろう。それだけで十分だ。迷う理由なんて、どこにもない。
――そのはずだった。
僕の内心を読み取ったかのように、セナが顔を上げた。
それまで抑えられていた声が、場違いなほどはっきりと響く。
「アナタの考えていることぐらい、わかるわ」
強い調子だったが、怒りではない。
むしろ、必死さに近い。
「でも、これから何かを決断するつもりなら、私の話をよく聞いてからでもいいと思う」
その瞳は、光の道ではなく、まっすぐに僕を捉えていた。
引き止めるというより、確かめているような視線。
僕は一度、足元の紋様に視線を落とした。
気づかないうちに、拳を握っていた。
進めば戻れない――その事実が、今になってゆっくりと胸に広がってくる。
「……わかったよ」
顔を上げて、セナを見る。
「セナ。君の話を、もっと聞かせてくれ」
一瞬だけ、彼女の目が揺れた。
それは安堵なのか、それとも別の感情なのか、僕にはわからない。
セナは小さく微笑もうとして、結局それをやめた。
代わりに浮かんだのは、どこか置き去りにされることを予感しているような――
ほんの少し、寂しそうな顔だった。




