カルテ2:女勇者レクサ
なんてことはない。ただの当てずっぽうだ。何か秘密を抱えているという、妙に身体の出来上がった女性となれば、勇者の可能性は高い。仮に外れていたとしても、「やっぱり違うんですね」と話を続ければ良いだけだ。ただ、これが当たれば、一気に患者からの評価が高くなる。何でも見抜ける名医という扱いになる。少し嫌らしいやり方だが、患者との距離を縮め、患者からの信頼を獲得するには有効な方法の一つである。
「まあ、何となくわかるんですよ」
「何でもお見通しなんですね。わかりました。私の悩みを聞いてください」
この僕の小手先のテクニックによって、やっと彼女も、全てを切り出す勇気が出てきたようだ。僕は、カウンターの奥に隠した、ラベルを乾燥させた「紙」と墨を取り出した。そのときにふと師匠の言葉を思い出した。
「精神科医というのはね、紙と筆記用具があればどこでもできる仕事なんですよ」
本当にその通りだ。
「はい。何があったんですか」
「私はね、村から離れられない勇者なんですよ」
「村から離れられない………?」
そして彼女は、訥々と自分の話を始めた。




