やっと……。
そこには真っ白な世界が広がっていた。明るい。久しぶりに見る白い灯りだ。
よく見ると真っ白な中に、黒いうっすらとした線が縦横に入っている。そして、その中に見えるアリの巣のような、大理石のような模様。
なつかしい。これはとてもなつかしいものだ。
そう、これは病院の天井だ。
それを自覚した瞬間、鼻腔に刺激的な匂いがうっすら入ってくることを認識する。
消毒薬の匂いだ。
つまり、ここは。僕の頭の中に、ある考えが湧いてくる。それはあまりにも待ち遠しく、期待していたことだ。ただ、それが現実になったなんて、にわかには信じられなかった。
さらに何かを確認するように、僕は首に力を入れてみた。そして、そろりと動かしてみる。よかった。ちゃんと動く。
やはり、僕はどこかの病院の、病室の中にいる。
そして左手に、誰かがごそごそと動く気配がする。僕は左側に顔を向けた。僕の左手には、看護師と思われるスタッフが何やら作業をしていた。僕は声をかけようとしたが、声は出なかった。ただ、その必要はなかったようだ。僕の首や視線の動きで、彼女は僕に気が付いた。
「大変!
中川さん、中川さん。
わかりますか?」
わかるとも、わかるとも。ここは病院だ。
そして、ここは元の世界だ。
僕はせいいっぱいの力で頷いた。




