目覚める
無。
無の中に僕がいる。そこにはただ暗闇がある。
僕は死んだのか?
これが死というものなのか?
闇の中から、白くぼうっとした何かが浮かび上がってくる。
その影はぐるぐると渦を巻きながら、やがて何かの形になっていく。
顔?
これは人の顔だ。
中心部がうっすらと盛り上がり、その上部に二か所窪みができる。
鼻と目だ。
やがてはっきりとした人の顔となり、それは見覚えのある何かだと僕は気が付いた。
レクサだ。レクサは、最後に見た時の顔をしている。ただ、目は空いている。そして、なぜか少し楽しそうに僕を見ている。
レクサに会えたということは、僕はやはり死んだのか。
やがてレクサの顔は、何かを話す。しかし、その声は聞こえない。ただ口が動いている。僕も何かを言おうと思うのだが、言葉にならない。
やがてレクサはにっこり笑って、一言口にした。相変わらず聞こえないが、何を言ったのか、僕にはわかった。
「がんばって」だ。
きっと。
そして、レクサの顔は再び渦を巻き始め、最盛期を過ぎた台風のように、ゆっくり消えていった。
今のは何だ。
そして、何かが聞こえてくる。一定のリズムを奏でる音。何かの電子音。
このリズムを聞いていると、なぜか心が休まる。
音はどんどん大きくなる。
この音。聞いたことがある。
やがて僕は気が付く。
心電図モニターの音だ。
その瞬間、僕は目を開けた。




