The End⁉
暗闇の中に浮かぶ、誰かの顔。
それはぐるぐると回転しながら僕に近づいてくる。
やがて、僕はその輪郭から、誰なのか気が付く。
「朋美!」
僕が叫ぶと、その顔はにっこり笑った朋美の顔になる。僕は両手を伸ばして、その顔を抱き寄せようとする。
その瞬間、僕は右の頬に何か温かいものを感じる。目をやると、そこには白くて指の細い美しい手。手の持ち主はレクサだ。レクサは、僕を真顔で見る。よく見ると、両目から涙が滲み出ている。レクサは何度も僕の頬をさすっている。
レクサの手の温もりは、だんだんと強く、はっきりと感じるようになる。
これは夢だ。僕は、今夢を見ているのだ。そのことに気が付いた瞬間、僕は明確に覚醒した。
瞼を開けると、そこにはレクサがいた。夢の中と同じ表情だ。ただ違うのは、左のこめかみから、赤く一筋の血が流れている。
「レ、クサ……?」
「良かった。起きてくれた」
レクサは悲しげに笑う。
そうだ、思い出した。僕たちは本部で今後の計画を練っていた。その途中、何かが崩れてきて、きっと僕は意識を失ったのだ。
そして気が付いた。僕の身体はがれきの山に埋もれている。身動きがとれない。
そしてそれはレクサも同じだ。僕の頬を触っている彼女の左手の顔を覗いて、埋まっている。つまり、僕達二人は生き埋めになっていた。そして、がれきとがれきの隙間から、少しだけ光がさして、辛うじてレクサの美しい顔が見えていた。
「レクサ、みんなは?」
僕の言葉に反応したのか、レクサの目に溜まっていた涙がとうとう溢れた。
「みんな、やられちゃった……」
え。
え。
え。
みんな?
ルーラも、リタも、国王も、クロン爺も、一緒についてきてくれた護衛の青年も、
みんな?
「イートンたちが本部を襲ってきたの。最初に落ちてきたレンガにあたって、デュロだけ先に倒れて。そのあとイートンたちと交戦になった。
みんなやられて……」
僕はレクサの声がだんだん弱まっていることに気が付いた。
「レクサ、大丈夫か」
レクサは、必死になってちょっとだけ笑顔をつくろうとした。
「ごめん。もうだめ。あの、最後に二つだけ。
私はあなたのことが好きです」
「レクサ、僕は……」
「ううん、答えなくていい。知ってるから。
あと、もう一つ。
薬の瓶」
「薬の瓶?」
レクサはゆっくり頷いた。
「そう、あなたが私のために作ってくれた、薬の瓶。
それを覚えておいて。お願い」
薬の瓶を覚えておく?
「それはどういう意……、ちょっと、レクサ、目を開けてくれ」
気が付けばレクサの両目は閉じられていた。揺り動かそうにも、両手が埋まっていて、僕は大声を出すしかなかった。
「レクサ、レクサ、レクサアアアアアアアアアア」
ありとあらゆる力を振り絞って、僕は絶叫した。
しかし、レクサは何も反応しなかった。僕の頬に添えられた彼女の手が冷たくなっていくのがわかった。
さらに、僕には彼女の死を嘆く暇も与えられなかった。僕の声に反応したのか、カラコロと何かが転がる音。僕は目だけでその方向を追った。
あ、崩れる。
僕は、再び、暗い暗い闇に飲まれた。




