セナの能力、そして。
「なるほど……。すると今回の異変は、君の妹、セナが仕掛けた可能性が高いというのだな」
「はい、残念ながら。私は妹について、ずっと思っていました。
彼女は、この世界を憎んでいたのだと。あまりにも強すぎる魔力を持ち過ぎたが故に、両親にも怖れられ、心から触れ合おうとしてくる者は誰もいない。そう感じていたのだと思います。
でも中身は普通の可愛らしい、小さな女の子でした。特別な魔力を持つ存在ではなく、普通に甘え、普通に友達を作り、普通に皆と遊びたかったんです。
せめて私が普通に心から触れ合える、そんな存在でありたいと頑張ってはきたつもりだったのですが」
レクサの両頬に、ボロボロと涙がこぼれ始めた。しかし、顔は真顔で、おそらく泣いていることに気が付いてすらいないかのように見えた。僕は思わず、右手で彼女の左手を、ぎゅっと握った。
「あの、レクサ。私から質問してもいいかな?」
それまでずっと話を聞いていたルーラが口を開いた。
「あ、はい」
自分の涙に気が付き、あわてて右手で拭き始めながらレクサが答えた。
「一回目、はじめてイートンが出現した時、私とクロン閣下と、リタでキシル山脈に行った。
あのとき6,7歳の少女がいた」
「ああ、そうだね。彼女がセナか」
リタが相槌を打つ。
「そのあと彼女が突然イートン達ごと消えて、一旦平和になったわけだ。そのとき、セナは何か言っていたような気がする。ええっと……」
「ああ、ルーラ。あれだよ。彼女は『いいこと、思いついた』とか、そんなことを言っていたはず」
「リタ、ありがとう。そうそう。そう言っていた。
その言葉の意味はなんだろう? 一体『いいこと』とは何だろうか。
何か見当はつくかい?」
レクサはしばらく考えた素振りを見せた後、小さくうなづいた。
「はい。なんとなく。
その前に、セナの能力についてお話したいと思います。
彼女には、おそらく彼女にしか使えない魔法があるんです。彼女と接しているうちに気が付いたのですが……」
「それは?」
「彼女は」
その瞬間、バンバンという大きな音が聞こえた。
「危ないっ」
誰かの叫ぶ声。落下する天井のレンガ。辺りを舞う粉塵。
そして僕は後頭部に衝撃を感じ、闇に包まれた。




