本当の姿
その気になる点とは、彼女の体つきだ。
といっても、ゾロのおやじが、いかにも好きそうな方向性での意味ではない。レクサは、おそらく20代中頃だろう。しかも盛り場の店員として入ったばかりの女性だ。そんなプロフィールの女性にしては、筋骨が発達しすぎている。まるで、長年の間、格闘技でも嗜んできたかのように。
僕は精神科医であった時代、僕は師匠から多くのことを学んだ。まず一つは全てを観察すること。服装、表情、仕草、語り方、患者さん達が話す内容、あるいはそれ以上に観察は大切な情報を教えてくれる。そして、もう一つ大切なこと。観察した結果から得られた「違和感」は、重要なメッセージを持っているということだ。
「さあ、いいんですよ。何がお困りで、ここまでいらっしゃったんですか」
「あの………」
しかし、レクサはなかなか話しにくそうだ。僕とゾロのおやじの方をチラチラと交互に見やっている。
「そうそう、ゾロさん。もう薬の準備もできたので」
「なんだよなんだよ。俺が邪魔者ってか」
さすがのゾロのおやじにも理解できたらしい。
「薬いつもより五回分多くしときましたから」
「わかったよ、ちゃんとレクサちゃんの悩みを解決してやってくれよ。じゃあ、レクサちゃん、また『メイラ』でな」
「ほんとっ、すみません! 私もママにかけあって、何かサービス考えときますのでっ」
ゾロのおやじは、薬の瓶を大きく掲げながら手を振り、店を出ていった。扉が閉まったあと、急に店内が静かに感じられる。
「では」
僕は一息ついてからこう言った。
「レクサさん、あなたはもしかして、『勇者』ではないですか?」
レクサはビクッとして、大きく目を見開いた。
「なぜそれを………」




