ラブを取り戻せ!
「あの…胡明……」
おずおずと扉を開けて、中にいる私を捉えるみゃーくん。
私は机に座り、パソコンに今月の収支のデータを入力したりニュースに出てきた単語を調べたりしていた。
お金の流れはクレジットカードの明細を見れば分かると思うかもしれないけど、今でも現金しか使えないところもあるし、口座引き落とししか支払いに設定できなかったりでごちゃごちゃしてしまっているから可視化したかった。
ニュースの単語もそれに似ていて、分からないものを分からないままにしておくのは気持ち悪かっただけだ。
お金も情報も、日々変化があるため仕事以外の時間はそれや家事に消費されていた。
「みゃーくん、どうしたの?」
私の彼氏のみゃーくんこと宮くんは少しの隙間から目を覗かせ、私の様子を伺っている。
お風呂後のため、ゆったりとしたスウェットの上下とワックスがつけられていないサラサラな黒髪が無造作に散らばっていた。
私はパソコンを閉じ、みゃーくんに近づく。
私もお風呂の後だから眼鏡という限られた視界越しでみゃーくんを見ていた。
「あーっと……その……」
チラチラと私を見ては、視線を外す。言いづらそうな様子からして…何か重要な話だったりするのかな?
「ん? なに?」
扉の近くまで来ると、扉から出てきて後ろ手に閉める。私の目線にあるみゃーくんの綺麗な鎖骨に、まだ水滴が付いてるのを見て胸がざわついた。
「……今、大丈夫?」
「うん。なにか話? 座る? なんか飲む?」
「あ、や! ……話っていうか……っ」
「うん?」
「だっ……抱きしめて…いいですか?」
「…………うぇ!?」
あ。そういえば、最近あまり恋人らしいことをしていなかったなと言われてから気づく。私は仕事、みゃーくんは大学へ行きながらバイトやインターンシップなどで互いに忙しかったからだ。
夜には一緒の家にいるわけだけど、ただ泊まるだけでルームシェアのようになってしまっていた。ラブが欠けていた。
「だめ? ……かな?」
うぅ。そんな丸っこい大きな目でじっと見つめられたら、首を縦に振るしかないじゃないか!(断る気もないけど)
すでに可愛い。もう可愛い。私の中の女性ホルモンが活発になった気がする。
「胡明に触りたくてハゲそう」
「ハゲんのかい! なにそれやめて想像しちゃうから」
「ん…。もう無理」
ふわっと、大事なもののように、潰さないように、抱きしめられた。
すっぽりとみゃーくんの腕に収まった私。私が収まることが決まっていたかのようなフィット感が気持ちよくて腕に力を込める。
同じシャンプーやコンディショナー、ボディソープや入浴剤なのにみゃーくんの匂いがするのはなんでなんだろう。
香水のような不自然なものでも柔軟剤でもないみゃーくんの匂い。大好きな匂い。みゃーくんの温もりと匂いで私の中の女が喜んでいる。
気づかれないようにこっそり頬擦りし、眼鏡がずれた。
「ふっ。可愛すぎ。俺なんかいなくても平気そうな顔してたのに」
少し体を引いてみゃーくんを見上げる。身長差で上目遣いになってしまう。
「平気ってわけじゃないよ。忙しかったから」
「忙しくても、俺は寝る前も夢の中でも起きた時も胡明のこと考えてたけど?」
「…拗ねないの!」
両手で頬を挟み、ぐっと顔を寄せる。背伸びしてもまだみゃーくんの方が高いから、足がぷるぷるし出す。
「……捕まって?」
「な、え、わ?!」
反射的にみゃーくんの首に腕を巻き付けると体が浮いた。よちよちと歩くとベッドに降ろされる。すぐさまみゃーくんが覆い被さってきて胸元にぱたりと倒れた。
「お……おお!? ど、どうしたの? 大丈夫?」
「んっ……」
「…みゃーくん? おーい?」
「……」
無視?無視なの?不機嫌タイム突入!?……でも、それでも可愛い。
みゃーくんの重さを感じながら、サラサラな髪の毛に手を差し込んだ。砂が指の間から落ちていくように髪がサラサラだった。
あやすように頭を撫でる。力が抜けていくようで、私の体に埋まっていくようだった。顔が埋まるくらいの胸がなくて申し訳ない気持ちになった。
「胸がもっとあったらよかったのにね」
「……」
「……」
「ここに耳を当てるとね? 胡明が生きてる音と胡明が俺のことを好きだって叫んでる音がするから好き」
「……」
否定しないところが流石だと思う。…うっ。
「…眠くなってきた」
「性欲より睡眠欲が勝ったか…」
「安心するんだ。昔から。胡明は姉ちゃんの親友で、類は友を呼ぶって言葉通りだったから」
「シスコンが」
「違うって言ってんじゃん。甘えたいのもキスしたいのもそれ以上も…これから一緒に生きたいと思ってるのも胡明だけ」
頭を起こし、私を見下す。真剣な表情に胸の鼓動がより一層激しくなる。ぶわっと顔に熱が集まった。
「…顔も、俺のこと好きって言ってんね?」
得意げに笑い、少しだけSっ気を出す。みゃーくんは私が自分に夢中だと分かると意地悪になる。顔を近づけると手が伸びてくる。
「眼鏡邪魔。」
カチャっと音を立てて、耳にかけていた眼鏡が抜かれていく。みゃーくんが小さくなっていき、レンズなしの世界はぼやけていた。
「どうせ見えなくなるからいいよね?」
コンタクトレンズをつけていても、それだけ近づけばぼやけるだろうという位置でぴたりと止まるみゃーくん。
息がぶつかる。瞬きするにも躊躇してしまう距離だった。
みゃーくんは、にやりと笑うだけ。
「う〜……」
少し動けば、唇が触れることは分かっている。みゃーくんは私が我慢できずにキスしてくることを望んでるけど、思い通りになるのが嫌だって知ってるから何もしないで耐えると予想しているだろう。
キスをするにしてもしないにしても、みゃーくんのSを刺激することになるので、どうすることもできず震え出す。
「粘るね? 素直になればいいのに」
しゃべると私の唇にスレスレだった。我慢ゲージがMAXになってしまい、タコ唇にして一瞬だけ触れた。
「……なにそれ可愛い。満足した?」
「……」
「…いじめすぎた? 胡明?」
「……」
「ちゃんとしたやつしよ? 濃厚なやつ」
ん、と唇を寄せるみゃーくん。
「…仕方ないなぁ」
みゃーくんの首に腕を回してゆっくり引き寄せると、待ち望んでいた感触に辿り着く。
「んっ……」
どちらともなく声が漏れる。ちゅ…ちゅ…と何度も重なる音が響いて、焦らされていた分満たされていく。
みゃーくんの一部に触れてるだけなのに、全身が別の体みたいに反応する。じっくり、じんわりみゃーくんの熱に溶かされていく。
気持ちよくて、止まらない。攻めたい気持ちが溢れ出て、みゃーくんを組み敷く。口内を犯し終えると、とろとろな顔のみゃーくんがいた。
「………寂しかった」
息が上がりながら落ちた言葉。隠していた本音。
『だっ……抱きしめて…いいですか?』
みゃーくんの気持ちを考えると、複雑な気持ちになった。年上の私が真っ先に気づくべきだったのにみゃーくんに言わせてしまった。
もしかしたら飽きちゃったかなとか嫌いになったかな、なんて気持ちも抱えながらも勇気出して近づいてくれたのだろうと思うと胸が痛い。
「…ごめんね」
すべすべの頬を親指で優しく撫でると、みゃーくんが私の後頭部のお団子を掴んで引き寄せる。
「もっと」
きゅん超えてギュン。おねだり可愛いすぎだろーー!全私が叫んだ。
「私もみゃーくんが足りない」
両手を絡ませて、触れるキスから深いキスへ。何度も角度を変えて、舌を絡ませて、刺激を与えて。
時々漏れる吐息と甘い声。ゾクゾクときゅんきゅんと痺れに酔う。
「胡明…胡明……っ」
ぎゅ、と抱きしめてくるみゃーくん。そして私の耳元で囁いた。
「大好きっ…」
なにこの可愛い生き物っ…!
めちゃくちゃ大切にしたい気持ちとめちゃくちゃ可愛がって壊れるほど感じさせたい気持ちが湧き上がる。
赤く潤ったみゃーくんの唇に触れるだけのキスを落としてから、その漆黒の目を見つめる。気持ちよさで潤んだ瞳に吸い込まれるように唇を押し付けた。
されるがままのみゃーくんに口元が緩む。さっきのSっ気はどこへやら。
みゃーくんの左耳まで移動すると柔らかい耳たぶをぱくりと口に含む。ビクッと反応するみゃーくんを楽しみつつ、耳に口付けて舌を突っ込む。必死に快楽に耐えながら私のパジャマを掴んでくるみゃーくんが可愛すぎて、攻めながらも自分の下腹部が疼いた。
耳から首筋、鎖骨…下へと愛撫を進めるとみゃーくんから苦しそうな声が漏れた。乱れたみゃーくんに、私も興奮してしまう。
「っ交代!」
「あ。」
上を奪われた。私に跨るみゃーくんは余裕がなさそうに触れ出す。
「まだ攻め足りないのに! 最後まで…んぅっ」
舌のザラザラで耳の中を擦られ、言葉を封じられる。感じるところを刺激されてるというよりはみゃーくんが触るから感じてるという感じで全身性感帯になったみたいだった。
みゃーくんが与える甘美な世界に頭から足先まで電気がビリビリと駆け巡り、意識が遠くなる中、みゃーくんが何度も私への愛の言葉を口にしていた。
最後に聞こえた言葉はというと、みゃーくんの心の叫びだった。
「俺を見て」「よそ見しないで」
みゃーくんからの愛で満たされ、深い眠りに落ちた。
ーーー…
あの日以降、隙間時間のイチャイチャを大切にした。みゃーくんがタブレットで論文を読んでいる時や本を読んでいる時に後ろから抱きしめてみゃーくんの頭や肩に自分の顎を乗せたり、カーペットの上に横になってる時はみゃーくんのお腹を枕にしたりした。
みゃーくんはソファで白湯を飲んでいる私の太ももを枕にして恥ずかしそうに綿棒を顔の横に持ってきて「耳かき…して?」とお願いしてきたり、一人で眠ったつもりなのに起きたらみゃーくんがベッドに忍び込んでいて添い寝をしていたこともあった。
今日はみゃーくんの喉の振動が聴きたくて、喋っている間喉に耳を当てさせてもらった。
溺愛カップルの日常に少しずつ戻っていっていた。
私は満足してしまっていたのかもしれない。みゃーくんに好きになってもらって、『好き』を言葉や行動に移してもらって、付き合うと同時に同棲をして。恋と恋人を手に入れたものと勘違いしていた。
人の気持ちも恋心も、収支やニュースみたいに日々…いや、瞬間で変わるもので可視化しなくてはいけなかったんだ。
伝えなくても分かる、は慢心なのかもしれない。
「ねぇ、みゃーくん?」
「ん? どうしたの胡明?」
「…してほしいこととか欲しいものとかある?」
リビングで私の料理を待ち侘びているみゃーくんに聞いてみた。「ん〜…」と少し考え込み、パッと閃いたかのように明るい表情をすると目を細めた。
「胡明に高校の制服を着てもらって“みゃーくん(ハート)”って言って欲しい!」
「え」
想像もしなかった返答に持っていたフライ返しをフライパンの上に落とす。慌てて持ち直し、焦げ目がついたであろうハンバーグをひっくり返した。
「ほら。出会った時はもうすでに胡明は高校卒業した後だったから、制服姿を生で見られず残念だったんだ。……俺の知らない胡明を見れたら、もっと胡明を知ることができるなぁって」
「みゃーくん……」
嬉しい。シンプルに嬉しい。もう出会って五年も経つのにまだ私を知りたいと思ってくれているなんて。まだ私に飽きず、興味をもってくれて。
当たり前のことではない。何かに興味をもつはできるかもしれないけど、興味を持ち続けることは簡単なことではない。それが、人間なら尚更だ。
同棲していれば“好き”という気持ちだけではなく、生活の違いや価値観の違いで相手の嫌いな面や許せない面も出てくることがあるだろう。日々の生活で精一杯になってしまい、相手に感情をぶつけてしまうこともあるだろう。
それでも私たちは、不穏な空気が漂うこともケンカもなかった。それは、今思えば、みゃーくんのおかげなのかもしれない。
両面を焼いたハンバーグににんじんとブロッコリーのグラッセをお皿に盛り、準備が整っているサラダとオニオンスープをテーブルに持っていく。みゃーくんはすぐケチャップを手に取り、ハンバーグに何かを描き出した。
「……」
“こ”“あ”“love”と三つに分けて描いたはいいものの、loveに関しては最後のeがoに見え残念な仕上がりになった。そして残ったハンバーグに猫を描き始める。
「…なんで猫?」
「なんとなく」
「そっか」
「あ。両方とも食べたいほど可愛いからかな?」
洋服に首を引っ込めて照れ隠しするみゃーくん。亀みたいな姿に眼福。可愛い。
『食べたいほど』なんて言うからみゃーくんとの熱い夜を思い出して全身がカーッと熱が籠る。夕飯を投げ出してみゃーくんをベッドに組み敷きたくなる。
「胡明ー? 食べないの?」
「……食べマス」
「…もしかして想像した?」
にやにやとし出すみゃーくん。台所に逃げようとすると腕を掴まれて耳元で「食後のデザートは胡明ね」と囁かれ、言葉と声の両方でハートをズキュンと射抜かれた。
「私も欲しいものがある」
「えっ…なに?」
「みゃーくんの全部」
「全部…? …………プロポーズ?」
「あ、そうじゃなくて」
「……」
「みゃーくんがみゃーくんでいてくれたら、他に何もいらない」
権力とか財力とか優越感とか、私には必要じゃない。ただ君が欲しい。
ーーー…
「胡明ー? 行ってきます!!」
みゃーくんの声が玄関から聞こえてきて焦り、見送りに出ようとするも"頭の仕上げ”を忘れていることに気がつき、慌てて取りに戻って着用する。
「みゃーくん! 待って!!」
ドタバタと玄関まで走ると、網タイツのせいもありつるっと滑る。
「あっ」
バランスが崩れ、重力に負けて落ちていく。ドアを開けかけたみゃーくんが振り返り、私の状況を把握し手を伸ばしてくれた。
みゃーくんが私を支えるために片足だけ靴を脱いで全身で受け止めてくれた。ガッと力強く抱き止められ、床に体を打ち付けずに済んだ。
私を立たせてくれて自分が飛ばした靴を探して履くと、ムッとした表情をして私を視界に入れる。
「ちょっと胡明! 俺を見送るためだけに危ないことは…………!?」
みゃーくんは目を見開き、息を止め、口をあんぐり開けて固まった。みゃーくんに見せるために黒猫のコスプレをしたとはいえ、実際にみゃーくんが見ている状況は恥ずかしく、目が泳ぎ、尻尾までついている本格的なズボンの裾が伸びないかなと少し下げてみる。
素材はエナメルなので、もちろん伸びない。分かってはいるけど、こんなにセクシーな格好をするのは下着や水着になった時ぐらいだった。
「……」
「…あ、あの……みゃーくん?」
「……」
「ど……どうかな…?」
顔や体が熱くなり、緊張で目まで潤んできた。ドキドキと鼓動し、息が苦しくなってきた。
「高校の制服はもう処分しちゃったから、代わりに黒猫になってみましたっ! 私…と猫を食べたいらしいので全部乗せ? みたいな?」
「……」
「クールさとセクシーさを兼ね備えたやつ選んでみたの。エナメルと猫耳のファー、エナメルとレースと編み上げのリボンのギャップが可愛いなって思って…」
「……」
「着ぐるみみたいな全身を覆うやつも考えたけど、本気を見せたくて……二の腕や胸やレースで透ける脇腹とか太ももとか…出しちゃった」
「……」
「……大好きだよ、みゃーくん」
声まで震えてきてしまった。恥ずかしい!恥ずかしい!!恥ずかしい!!!
全身で伝える『好き』ってこんなに恥ずかしいものなのか!
「……」
「……」
え、なんで無言?…もしかして似合ってない?さすがに無理があった!?
まだアラサー前とはいえ私がコスプレなんて言葉を失くした!?やめておけば良かった!?
「……胡明のばかっ」
「え…?! あっ」
腰に手が回されグッと引き寄せられると、反対の手が背中に添えられる。一瞬、みゃーくんが泣いていたように見えたのは気のせい?
玄関の段差の影響でみゃーくんと同じぐらいの高さになる。気づかれないように息を吸い、みゃーくんの匂いを取り込んだ。
「俺のため?」
「自分のためだよ」
「胡明のため?」
「うん。これからも大好きっていう気持ちを表したの。ラブも可視化しなきゃね」
ゆっくり離される体。
「え」
みゃーくんの顔は涙で濡れていた。
「ど…どうし「どんだけ惚れさせれば気が済むの」」
ポロポロ流れる涙は宝石のように輝きを放ち、キレイで一つ残らず受け止めたい気持ちになったけど、涙よりも本体のみゃーくんをなんとかしようと自分の手で涙を拭った。
これからみゃーくんが出かけなければ舐め回したい気持ちもあったけど、やめておいた。
次第に手がみゃーくんの想いで溢れ、ティッシュを取りにリビングに戻ろうと考えているとまたみゃーくんの胸の中に収まる。
「胡明」
「ん?」
「俺、大学卒業したら胡明と……」
ハッとしたみゃーくんは誤魔化すように「遅刻するからそろそろ行かないと」と言い出した。背中を向け、扉に手をかけると数秒立ち止まってくるりと私へと向いた。
「忘れ物しちゃった」
そして私に近づき、ゆるく巻いたショコラブラウンの髪に手を差し込み、唇を重ねた。
柔らかくてしっとりしているみゃーくんの唇は、弾力があって優しくて、何度でも触れたくなる。
行ってきますのちゅーだから一回だけかと思ったのに、角度を変えて何度も味わってくるから笑ってしまった。
「ちょ…胡明、まだ足りない」
触れるだけのキスから啄むようなキス、舌を這わせるようなキスへと変化していき、みゃーくんの指がツーっと私の背中の肌をなぞり出す。
背中も露出してたんだった。つい甘い声が漏れて、ビクッとしてしまった。
「…可愛すぎ。ずるい」
そして、私の髪を耳にかけてから、無防備な耳元へ「今すぐ襲いたい」と囁いた。
「だっ…ダメだよ! もう行かないと」
「あとちょっと」
顔を傾けて来るみゃーくん。
「みゃーくん! みゃーくんったら!」
止めようとするも止まらないみゃーくんに、口先だけで結局受け入れてしまう私。みゃーくんのキス攻撃にふにゃふにゃにされ、その隙にみゃーくんは肌が見えてる二の腕や谷間、太ももにキスを落とし、満足したように「行ってきます!」と言った。
脱力してメロメロにされた私は見守ることしかできず、扉が閉まって行くのを眺めていたけど、閉まる寸前にみゃーくんの目が覗き込む。
「俺の帰る場所は、胡明の隣だから」
悶絶した。
溺愛カップルの日常は続き、溺愛夫婦の日常へとなったのはそれから二年経った後のことだった。
終