表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうせ俺はNPCだから 2nd BURNING!  作者: 枕崎 純之助
第一章 『堕天使の森』
6/72

第5話 襲撃!

灼熱鴉バーン・クロウ!」


 燃え盛る炎のからすが小屋の天井をぶち破り、俺はそれに続いて飛び上がった。

 そして天井に開いたあなを抜けて小屋の外に出る。

 そのまま一気に上昇しようとしたが、小屋の近くにある木々の枝に陣取っていた奴らが、文字通り、屋根の上に黒いあみを張って待ち受けていやがった。

 この小屋を襲撃してきた連中だ。

 こいつら……俺たちが屋根から脱出することを予測して、あみからめ取ろうと考えたのか。


 だが、俺が放った灼熱鴉バーン・クロウは小屋の天井をぶち破るのみならず、そのあみをも突き破っていたため、俺は構わずに破れたあみをくぐり抜けた。

 そのまま急上昇して森の上空へ抜けると、下からは飛行能力のないパメラを抱えたティナが翼をはためかせて必死の顔で付いてきていた。


「ま、待って下さい~」

「何とかついてきやがったか」


 だが、ついてきたのはティナたちだけではなかった。

 堕天使だてんしどもが森の中からワラワラと出てきやがったんだ。

 その数、十数人。

 さっきパメラを追っていた奴らの別働隊か?


 それにしても妙だ。

 あれだけの人数が小屋を取り囲んでいたってのに、どうして俺はまったく気付かなかったんだ……ん?

 そこで俺は視界のはしに見慣れた空間の揺らぎをとらえた。

 山小屋を取り囲む森の中にチラホラとそんな揺らぎが見える。

 あれは……。


「バレットさん! 敵が追ってきます!」

「見りゃ分かる。奴らは俺が叩きつぶす。おまえは俺の邪魔にならねえようパメラを連れて上空に避難しとけ」


 そう言うやいなや、俺はすぐさま急降下して堕天使だてんしどもを迎え撃った。

 奴らは空中から弓矢や投げ槍でこちらを攻撃してくるが、そんなもんに当たる俺じゃねえ。

 それらを次々とかわして俺は必殺の飛び道具を放った。


灼熱鴉バーン・クロウ!」

 

 燃え盛るからすは十数メートル先の堕天使だてんしを直撃する。

 

「ひぎゃあああああっ!」


 堕天使だてんしは火だるまになって森へと墜落していった。

 そうして2人、3人と堕天使だてんしを撃ち落としていった俺は、4人目に灼熱鴉バーン・クロウを放つ。

 そこで奇妙な現象が発生した。

 俺が灼熱鴉バーン・クロウの標的としたのは、野郎どもばかりの集団の中にあって唯一、女の堕天使だてんしだった。

 俺の放った灼熱鴉バーン・クロウはその女に直撃したかと思ったが、きれいに跳ね返って俺の方へ戻ってきやがったんだ。


「なにっ?」


 反射系の防御魔法か何かか?

 堕天使だてんしの野盗ごときにそんな高度なスキルを使う奴がいるってのか?


「チッ!」


 俺は向かってきた灼熱鴉バーン・クロウを避けると、その女堕天使(だてんし)の元へ突っ込んでいく。

 それをはばむように男の堕天使だてんしどもが群がってきやがった。


「邪魔だ!」


 俺はそいつらを魔刃脚デビル・ブレードで1人また1人と切り裂く。

 首や胸を斬り裂かれた奴らが次々とゲームオーバーにおちいっていく。

 やはりレベル的にも大したことのない奴らだ。

 男どもを蹴散らした俺は先ほどの女堕天使(だてんし)ねらおうとした。

 だが、女の姿はすでに前方から消えていたんだ。


「……!」


 どこに行きやがった?

 ……ハッ!

 俺は背後に嫌な気配を感じて、振り向きざまに手刀をなぎ払った。


魔刃腕デビル・エッジ!」


 魔刃脚デビル・ブレードの腕版であるその技は空を切った。

 俺の背後に迫っていた堕天使だてんしの女は、一瞬で後方に下がっていたんだ。


「危ない危ない。下級悪魔のわりにはなかなか勘の鋭い男じゃないの」


 堕天使だてんしの女はムカつく薄笑みをその顔に浮かべながらそう言った。

 この女、一瞬で俺の背後を突きやがった上に、俺の咄嗟とっさの一撃をあっさりとかわしやがった。

 他の堕天使だてんしどもとは動きが違う。


 そして女を守るように男の堕天使だてんしたちがその周囲に集まっていく。

 チッ。

 見誤ったぜ。

 男の堕天使だてんしどもにまぎれていやがったから判別できなかったが、どうやらあの女がこの集団のかしらのようだな。

 女は傲然ごうぜんと腕を組むと余裕の笑みを浮かべて言った。


「ここいらはこのヒルダ様の縄張なわばりよ。あたしの盗賊団チームのシマに入って通行料も払わずに進めるとでも思ってるわけ? 馬鹿な奴らね」

「ハッ。縄張なわばりだ盗賊団チームだって、どこに行ってもくだらねえアホどもはいるもんだな。通行料だと? てめえらにはケツの毛1本だってくれてやるかよ」


 俺がそう言うと、ヒルダとか名乗るその女は部下の堕天使だてんしどもに命じた。


「上にいる女2人を取り押さえて。この悪魔はあたし1人で十分だから」


 その言葉に従い、堕天使だてんしどもがティナたちに向かって上昇していく。

 そんな中、1人残ったヒルダは取り出した石弓を装備し、性根の悪さを隠そうともしない顔で言う。


「あの天使と人間の女はこっちにいただいていくわよ。あんたが食うつもりか売り払うつもりだったんだろうけど、悪いわねぇ。こっちも略奪稼業なもんでさ」

「ケッ。堕天使だてんしふぜいが俺から略奪できる可能性があると思うか? ねえよ。1%もな」

「下級悪魔の分際であたしら堕天使だてんしを下に見てるわけ? そんな身の程知らずには教育が必要ね。あたしが現実の厳しさを教えてあげる」


 そう言ってヒルダが構えた石弓から放たれた矢は、真正面から飛んできたにもかかわらず、一瞬で背後から俺を襲ってきやがった。


「チッ!」


 俺は体をひねってそれをかわすが、避けたはずの矢は再びこちらを向いて襲い掛かってくる。

 前方から向かってきたかと思えばいきなり消えて後方から襲ってきた。

 これは……あの女のスキルか?

 

魔刃脚デビル・ブレード!」


 俺は前方から飛んでくる矢を蹴りつけてへし折るが、その間にもヒルダは次々と連続で矢を放ってくる。

 俺は矢を避け、へし折っていくが、ヒルダはしつこく矢を放ち続ける。

 前方から飛んでくる矢はことごとく消え、俺の死角をついて背後や頭上からねらいをつけてきやがる。

 俺は全身の神経を研ぎ澄ませて、矢の飛来を感じ取る。


 そして俺が気を付けるべきはそれだけじゃねえ。

 堕天使だてんしどものお家芸は毒矢だ。

 間違いなくこのやじりにも毒が塗り込まれているだろう。

 当たったら解毒剤やら何やらの処置で面倒だ。

 そして四苦八苦しながら矢を避け続ける俺をヒルダはあざけり笑った。


「アッハッハ! 面白い大道芸。もっとおどってよ。マヌケな下級悪魔くん」


 くそったれが。

 頭にくる女だ。

 すぐに思い切りそのツラをぶんなぐってやるから見てやがれ。

 俺は腹の底で怒りを燃やしながらも、頭の中は冷静に戦況を観察していた。


 思い出すぜ。

 こうして様々な方向から迫り来る攻撃を俺はよく知っている。

 身を持って体験したことがあるからだ。

 これは以前にあのグリフィンと戦った時に起きた現象とよく似ていた。


 あの時も前方から突き出されたグリフィンの槍の穂先が、背後から襲い掛かってきた。

 それは奴が不正プログラムによって自由に空間をねじ曲げていたから……ん?

 そこで俺は自分の体の周囲に何やらキラキラと光るちりのようなものがちらついているのを視界にとらえた。


 何だ?

 矢を避けながらなのでハッキリと見ることは出来ないが、それは陽光に照らされたほこりのようにキラキラと俺の周囲十数メートルの周囲を全方位から包み込んでいる。

 そこで俺は見た。

 避けたはずの矢がそのほこりのようなキラめきに触れた途端とたん、空気の揺らぎが発生し、矢が180度転換して再びこちらに向かってきやがったんだ。


「くそったれ!」


 俺は右手の手甲・灼焔鉄甲カグツチで矢を叩き落としたが、へし折れたはずのその矢は俺の真下十数メートルのところで先ほど同様にキラめくほこりに触れた。

 すると空間の揺らぎが発生し、今度は折れたはずの矢が元通りに修復されて俺に向かって来やがった。


「チッ! そういうことかよ!」


 自分の迂闊うかつさに舌打ちをした。

 あのヒルダとかいう女の使う術が不正プログラムによく似ているのは、それが不正プログラムそのものだからなんじゃないか?

 俺は攻撃をかわしつつ、十数メートル先に見えるヒルダの姿に目を凝らした。

 ムカつくその女は石弓につがえた矢を次々と俺に向かって放ち続けている。


 そのせいで俺を襲う矢の数が増え、俺は一度に数十本の矢を避け続けなければならない状況におちいっていた。

 ふざけやがって!

 だがこうして見る限り、今のところ俺の目にはヒルダの体のどこかにバグの揺らぎが生じる様子は見えない。

 現時点ではヒルダが不正プログラムの保持者なのかそうではないのか判別はつかないが、頭に来ている俺にはそんなもんはどっちでも良かった。


「調子こいてんじゃねえぞ!」


 俺にとって今一番優先すべきことは、あのクソむかつく女をこの拳でぶんなぐってやることだけだ。

 俺は矢をかわして空中で身をひるがえしながら、急激に体内の魔力を高めた。

 すると俺の体から紅蓮ぐれんの炎が噴き上がる。

 そして体中からパチパチと青い稲妻が走るようになった。


焔雷フレア・スパーク!」


 この体から激しく吹き上がる炎とまき散らされる雷が、俺を襲う全ての矢を燃やし尽くした。

 その様子におどろいて目を見開くヒルダに、俺は言い放った。


「遊んでもらった礼をしねえとな。ヒルダ。てめえは火あぶりの刑だ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ