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第16話 ダンジョン①

僕は今憧れのダンジョンの地に立っている。


ドアをくぐるとそこは…もうすでにダンジョンの中だった。

例えるならドアを開けたら玄関がなくてすぐに部屋の中だった感じ。


もうちょっと、こうなんというかダンジョンに入る前の空間というか、

そういう配慮が欲しかったよね。

そういう所だぞ!レイ君。


“キュピピピー”

「いや、フェイはありがとうね。」


そうなのだ、ここは異世界なのでフェイが実体化しているのだ。

丸い円球でツヤツヤでプカプカと浮いている。

といってもフェイは妖精なので自分以外には見えないらしいんだけど、

レイ君が僕に付き添えないのでフェイを付けてくれたのだ。

それだけでも感謝!


フェイには僕のサポートと、主にセーブ機能としての役割がある。

どこまで進んでも自由に僕の部屋へ帰還できたり、

出発する時は階ごとにという制限はあるけど、進んだ好きな階へと進めてくれる。

あと会話相手にもなってくれるなんて、なんて便利なんだ。

1家に1台欲しいよね。


“キュピー”

ちなみに今の“キュピー”は「何が1家に1台は欲しいだ、殺すよ」だ。

たった4文字の中に16文字の殺気が込められていたんだぜ。


キュピーの泣き声が僕の脳に直接訳されて聞こえてくるんだ。

だから普通に会話が成り立つんだ。


「レイ君は今なにしてるの?」

“キッュピー(今はゆずるの部屋で北斗の拳3巻読んでるよ)”


「3巻ってまだ序盤やん! 最近読み始めたばかりじゃん。

そんなの読む時間があるんなら付いてきて欲しかったよ。」

“キピー(しかも今さら感もね)”


という感じにコミュニケーションは取れているんだ。


よし、いつまでもここに居てもしょうがない。そろそろ1歩踏み出すか。


“キピピピピピピピピー(ちょっと待って!)”

「ん、どうしたの?急に大声出して。」


“キピピー(進む前にレイがゆずると話したいって。変わるね)”

「お、何か言い忘れた事でもあったのかな。」


“ゆずるか?今お前の脳に直接話しかけている。”

「おお聞こえる聞こえる。で何?」


“出かける前に悪いんだが…北斗の拳4巻が見当たらないんだ、どこに…”

「フェイ切っていいよ。」


よし、いつまでもここに居てもしょうがない。そろそろ1歩踏み出すか。

こうして僕は地球人として初めて異世界のダンジョンに踏み込むのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さ〜〜〜〜〜〜い悪だ!メンタル削られる~~~ルルル。」


ダンジョンに入って30分。

最初の魔物とのご対面は…そう定番中の定番スライムでした。


正直、しょうじーーーーーーき、ぽよんぽよんしたの期待したんです。

でも、でもでもでもでもそんなの関係ねー。


ねばねばしてるの。実際触ってないからねばねばしてるかどうかはわからないけれども動きがねばねばしてて、イメージとしてはアメーバなの。


レイ君にもらったひのきの棒で殴るじゃん?

1回じゃ死なないから3回、4回と殴るじゃん?

そうしたら、あいつら死ぬ時弾け飛ぶわけ、パーンって。


弾けたら僕ひのきの棒じゃん、

振り下ろして、頭も下がってるじゃん、

その無防備な顔のところに弾け飛ぶもんだから

顔中がスライムの体液だらけなわけ。

わかる?ねえ?わかってくれるよね?


死骸は予想通り魔石を残して消えていくけど、

俺の顔に付いた体液みたいなのは消えないんだけど。

何でよ、消えろよ一緒に。

不条理だ…


ダンジョンの中だから仕方なくこのまま進んでいるけれどもよ。

本当ならスライム1匹倒して汚れる度に部屋に帰ってシャワー浴びるところだよ。

“キッュピー(女子か!)”

よかった、フェイが突っ込んでくれた。

癒される~~。


「ところでフェイ、このスライムの体液の成分は?大丈夫なのかな?」

“キッュピー(えっ猛毒だよ。)”


「ぶぶぶぶぶぶーーーーーーなぜ教えてくれなかったのフェイ?なかなかの急用案件だよ」

“キッュピー(でも謎システムでゆずるは守られてるから安心して)”


「そうか、なら良くはないけどいいか。」

“キッュピー(ちなみにフェイに頼めば洗い流せるよ)”


早く言って欲しかったーーーーーーー。


それからは随分スライム退治も捗った。

弾いては流して、流しては弾いて、最終的にひのきの棒は体液でテッカテカに黒光りするまで使い込んだかんね。

3時間ぐらい没頭してスライムの魔石の数は63個にもなった。


「結構集まったな。こんなだけあればいい稼ぎになるだろう。なにせ今の俺は無職だからな。」

よし今日は初日だからもう帰るか。


「フェイ一度戻るからセーブよろしく。」

そう言ってフェイに右手を乗せると一瞬光ってセーブが完了した。

そしてダンジョンを脱した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おかえりー」

レイ君がベットに横たわりポテチを食いながら出迎えてくれた。

もちろん目線はコミックに釘付のままだが。


「あー疲れた。もうスライムマスターの僕に怖いものはないよ。」

「マスターおめー。まあ定番だけあって最弱だけどな。」


「ああ、そういえばスライム魔石いっぱいたまったんで換金お願いします。」

「いいよ。えーっと全部で63個ね。なかなか多いな。はい、3150円、頑張ったな。」

やっすーーー。いや、スライムだから安いとは思ってたけど1個50円か。


「まあ、そんなもんだぜ。スライムの魔石だからな。でも3時間で3,000円なら時給1,000円だぜ。なかなかじゃないか。」

ぶっちゃけウーバー●ーツの方が儲かりそう。


スライムは弱かったけど、ずっと緊張を強いられるから精神的負担が半端無い。

肉体的にもツライけど慣れかなこれは。


「…また明日からがんばります。」

精も根も尽き果てて今日は夜6時から夜食も取らずに寝た。

ベットの上のポテチの食べかすを気にもしないで。


掃除しておいてよね。

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