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第1話 神崎ゆずるの復讐

見切り発車ですが、6年ぶりの投稿です。ひとりでも笑ってくれたら幸いです。

4話ぐらいからふざけてきます。

“この世に因果応報はないんだな。”


僕は偶然片桐祐介のSNSを見つけて涙が頬をつたった。


…悔しい。やり場のない怒りに思い通りに動かなくなった右手に目をやる。


高校を中退して2年。小学校3年から8年。

何度も死のうと思ったことがある。

動かなくなった右手、障害がある事でいじめや心ない言葉をかけられた事も数知れず。


その度にこんな右手にした片桐祐介を思い出す。

何度こんな目に合わせた片桐祐介に復讐したやろと思った事か。

自制心といえば聞こえはいいが、単に仕返しする根性が無いだけだ。


昨年女手一つで俺を育ててくれた母親が過労死で亡くなった。


僕を一人で産んだ母はずっと働きづめだった。

僕を守るために母はずっと働きづめだった。


母が亡くなった時に涙は出なかった。

やっと苦しみから解放されたんだと思うと悲しみよりも正直少しの安堵感があった。


やっと日常が取り戻せたある日何気なく見ていたSNSに片桐祐介を見つけた。「若くして会社役員の将来はバラ色!二代目社長豪遊セレブ生活!」というタイトルをつけ、豪華な食事や車、時計、装飾品。派手な交友関係をこれでもかと見せつける自己顕示欲の強いSNSを。


地元では有名な会社のボンボンだ。あの時も親の権力を笠に着て僕の傷害をもみ消し、そして母の事も蔑み侮辱した。子も子なら親も親だ。


傷害を負わされた僕がこんな惨めな生活をして、傷害を負わした側が何の負い目も負わずのうのうと人生を謳歌している…なんてこの世は理不尽なんだ。


“この世に因果応報はないんだな。”


僕は悔し涙を流し、決意した。

片桐祐介に復讐してやる!と。


母親も亡くなって、もう僕には守るべきものは何も無い。

怖いものも何も無い。

復讐を遂げた後は何の未練も無い。

僕は命を絶とうと決意した。


ピローン


スマホにメールの通知が届いた。なにげに画面に目を落としメールを開く。


そこに書かれていた文字を見てはっと息を飲んだ。


「初めまして神崎ゆずるさん。あなたの復讐、代行いたします。」


僕は日が暮れて夕日が差し込む誰もいないはずの6畳の部屋を見回し、何度もメールを見返した。


=====================


二の宮駅の中心街にあるアーケード通りを歩いて、一番端っこにある商業ビルを見上げる。ビル自体はそんなに高くなく5階程度だ。1階は花屋さんで各階ともテナントが入っているようだ。ビルの外観に各階にテナントの看板が掛けられている。


花屋の入り口横のドアを開け中央にあるエレベータに乗る。4人乗りの少し窮屈なエレベーターに乗りこみ6階のボタンを押す。気持ち悪い浮遊感を伴って2、3、4とカウントアップする表示を見上げて心を落ち着かせる。


ここに来るまで葛藤がなかったわけではない。いったい誰が?どのようにして?何が目的だ?と。

しかし、本当に復讐ができるならば、たとえ騙されても…という気持ちの方が勝ってメールの指示に従った。


ポーンと到達音が鳴ると同時にエレベーターのドアが開いた。そこは20畳ぐらいの白い空間がただポツンと存在してるのみ。エレベーターから降りて2、3歩前に進むと10mぐらい先の正面にマンションの片開きドアのような形が浮き上がる。近づいてドアノブを引くと、どうやら鍵はかかっていないようだ。


開いた先も真っ白な空間で、廊下の脇にはドアが2つずつ。正面のドアが開かれる。


「中に入ってこいよ。」


そんな声に何の疑問も抱かず正面ドアをくぐると…


目の前には10畳くらいの壁1面真っ白な部屋。窓、照明器具がないのにもかかわらずとても明るい。その真ん中に2人掛けのソファーが向かい合って2つ。奥のソファーに少年が鎮座していた。


見た目は16歳ぐらいの男? 銀色のメンズマッシュで左目だけが髪で隠れている。全身真っ白。白シャツに白ネクタイの制服のようなスーツを着ている。


「初めましてだな。突っ立てないでさっさとそこに座れよ」


会うまでの不信感、猜疑心が洗われるかのようなとても涼やかな声とは裏腹に乱暴な言葉使いに脳の処理が追いつかず、混乱してその場で立ちつくした。


これが僕とレイ君との初めての出会いだった。

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