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僕はちーちゃんの夢を見る  作者: こいこい
2/2

②-1夢見た後で

 昨日、目が覚めた時からの記憶がはっきりと残っていた。ここまで夢の記憶が残っているのは初めてかもしれない。昨日の現実であった出来事と昨日の夢では頭に残る量が違うはずなのに。

 それでも気分はいいものだった。夢の中とはいえ、高校時代にできなかったことを 一つ完遂できたのだから。心の中の後悔が一つ消えたのだ。


 そんなことを考えながら気分のいい朝を迎えた俺は会社に来ていた。

 大学を卒業して入った会社にかれこれ七年働いている。システムエンジニアと言えば聞こえがいいかもしれないが、まぁそんなところだ。


「なんか先輩、今日機嫌いいっすね」


「そうか?」


 そう言って振り返る。声の主に顔も見ず、先に返答したのは、声で誰だかわかったからだ。

 特に社内で俺に好んで話しかけてくる奴なんて、大体この生意気な後輩くらいだからな。

 入社二年目の後輩である祈莉。最初の一年間は研修係として可愛がっていたのだが、今となっては生意気だがいい後輩になった。

 社内だけでなく、仕事終わりに呑みに行ったりもする仲だ。何故か可愛い後輩というよりは部活動の元気な後輩というイメージを持ってしまう。そのせいか、お互いが楽に話せる関係になってしまった。これは上司と部下の関係ではようない気もするが。


「昨日なんかあったんすか?」


「ん? まぁ大したことじゃねえよ」


「まさか、結婚っすか?」


 わざとらしい言い方にも機敏に反応しない。こいつは俺をからかいたくてこう言っている。


「彼女もいねーのにどうやってすんだよ」


「そうっすよねー先輩モテないっすもんね」


 口元を緩ませて笑いをこらえるように言ってきやがった。


「馬鹿、俺だってな……」


 頭に浮かんできたのは今まで人生で通ってきた恋愛ではなく、昨日の夢での出来事。恋愛とは程遠い、しかも夢ともなれば妄想男として更にからかわれる。そう思い、言葉を詰まってしまった。

 その躊躇を祈莉は見逃さずに突いてきた。


「返す言葉もないってこのことっすね」


「うるせー」


 俺だって恋愛経験は多少なりともある。それでもなぜか言う気にならなかった。昨日の華やかな夢が何となく壊れてしまうような気がしたからだ。


「今日夜なら空いてるっすよ。聞いてあげましょーか?」


 祈莉はポンと肩に手を置いてきた。後輩なのだが、こいつのこういう馴れ馴れしい態度は嫌いじゃない。だからこそ仲良くできるのかもしれない。


「飯が目的なんだろ」


「ばれたっすか」


 小さく舌を出して言った。今時アニメキャラでも珍しいようなリアクションに鼻で笑ってしまう。

 そういえば今月はまだ祈莉と呑みに行っていなかった。


「まぁ、いいや。久しぶりに呑みに行くか」


「いいっすね。今日は残業しないで終わらします」


 その言葉を引き出すための会話だと思えるくらい、あっさりと去って行った。あいつのこういうところが可愛くもあり、呆れもする。

 二年前の新人とは違い、今となってはこんな感じで遊ばれている気がする。

 そのまま仕事を続けると時間はあっという間に六時になった。この時期、そこまで大きな仕事はないので、残業はしなくていいか。

 デスクを片付け終わるとそのまま上着を羽織りながらフロア全体を見渡す。

 そのまま残業する社員もいれば。帰り支度を始めている社員もいる。だが、肝心の探し人である祈莉の姿が見当たらない。


「あれ?」


 どこ行ったんだと思ったその瞬間、デスクに置いていたスマートフォンが震えた。

 画面を見ると祈莉からのメッセージ。


『玄関で待ってるっす』


 メッセージを見て、小さくため息をつく。そのまま鞄とスマートフォンを手に持って小走りで玄関へと向かう。

もう少しだけ続きます

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