04ハズレ聖女は変身する
「はぁ~お風呂スッキリしたぁ!」
「傷んだ部分は切り、長さはあまり変えずに毛先を動きのあるカットにし、ハーフアップに結ってみましたわ」
湯あみしシンプルで品の良いワンピースに着替えたユノに、ドヤ顔で手鏡を差し出す侍女のアメリ。
「え?何この鏡!魔道具なの!?」
鏡に映るなつかしい姉妹の顔を見て、驚いて一瞬フリーズするユノ。鏡に映る角度変えてみたり笑ってみたりして、食い入るように手鏡を見つめる。
「鏡に雪姉の顔が映ってる!。いや雪姉より少し若いかな?、雪姉と妹の沙雪を足して割ったような・・・」
「えっ!?まさか、これ私・・・なの?」
なんということでしょう!。無駄に付いていた贅肉がすっかり片付けられ、埋もれていた本来の骨格を取り戻しました
あまりにもビフォーアフターした自分の姿に、某番組のナレーションを無意識に呟いてしまうほど、わたしは混乱していた。そこにはデブスの姿はもうなかった。
異世界に召喚されてから、そういえば鏡をずっと見ていなかった。レン王子のこのお屋敷には、なぜか鏡が一枚も無かったので、ここへ来てからも見る機会がなかったのだ。
三姉妹でわたしだけ両親に似てなくて、遺伝子仕事しろよ!って思ってたけど、ちゃんと仕事してたんだね。本当にパパとママの子だったんだなぁ・・・。初めてみた痩せた自分の顔は、初めてみたのにとてもなつかしくて、なんだか家族にすごく会いたくなった・・・。わたしは溢れてきた涙を見られないように、目をゴシゴシと擦った。
「ユノ様はとてもお綺麗ですよ」
わたしがあまりにも手鏡を見続けていたせいか、侍女のアメリがクローゼットから全身が映る姿見を出してくれた。部屋に鏡がないわけではなく、どうやら鏡はしまってあるようだ。
侍女のアメリは、身支度を整え終えたユノを見て、目を見張った。それは初対面のときのような恐怖からではなく、心から美しいと思ったからだ。
色白な肌に艶のある長い黒髪。少し癖のあった髪はカットの良さが活き跳動感がでている。瑞々しく光を反射する大きな黒い瞳にくるくると良く変わる表情。すらりと伸びた細く長い手足に小さな顔。
「眠る姿と白目を剥いて粥をすする姿しかみていなかったので、これまで気づきませんでしたが、これはちょっとヤバイぐらいの美しさですわね。好色な王や王子に見つからないように、私がお守りしなければ!」。
ユノに聞こえないぐらいの小声で呟くと、侍女のアメリは使命感に燃えた顔で拳を握りしめた。
ふいに「あっ」と呟くユノ。
頭の中でピロリーンと機械音が鳴り、「レベルアップしました、スキル:『心眼』『攻撃魔法』が解放されました」とメッセージ音が流れる。
慌ててスキルボードを出して確認すると、スキル欄の「心眼」がグレーから白文字に変わっていた。しかもこれまでなかった「攻撃魔法」が増えている。
死にかけてスキルが解放されたとか?。聖女なのに、なぜに攻撃魔法?。コレで誰かを攻撃していいってことかしら?。ふふっ、真っ先にヤルなら、私を餓死させようとしたあの第一王子ね。
「どうかされましたかユノ様?。もしやお体の具合がまだ・・・」
物騒なことを考えていると、侍女のアメリが心配そうに私のほうを見た。
「ううん、何でもないわ、大丈夫よ」
スキルボードは他人には見えない、何もない空間を凝視していたら、変な人だわ。
能力を検証するのは一人になったときに、後でしよう
「そうですか。では参りましょうか、レン王子がお待ちですわ」
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