本当は妹をクンカクンカして愛でたいだけ
不定期で連載しようと思っています。いままで小説を完結させたことがないですが、頑張ります。
ー何故か私のことを周囲の人は憐れみ、慈しみ、愛情を向けてくる。けれども、私は彼らの想いには応えられない。なぜなら、彼らは何も見えていないから。ー
私はとある王国のそれはそれは身分の高い貴族様の中でもかなり偉い公爵家に生まれました。私は美人なお母様の特徴を良く引き継いでこの世に生を受けました。人生薔薇色になることだと思われました。
残念ながらその後、産後の肥立ちが悪く、弱っていたところに感染症にかかって私のお母様はぽっくりと死んでしまったそうです。
母を愛していた父は数週間は荒れたそうです。ただ、悲しみを埋めるために街中を徘徊し、たまたま見つけた母と似た体格・髪の女を手込めにしました。その結果、出来たのが私の妹です。
私はまだ赤子だったので詳しくは知りませんが、父はとてもがっかりしたそうです。妹の母を手込めにした時は暗かったので顔は良く見えなかったのですが、明るい場所で顔を見れば容姿は中の下、私の実母の足下にも及びませんでした。
数年後、父は新しく貴族令嬢を嫁に迎えました。なるほど、美しいなと幼い私も感嘆しました。横でデレデレしている気持ち悪い父の顔は良く覚えています。父は現金なもので、私のお母様のことはすっかり忘れ、令嬢様に夢中でした。まあ、そんなものでしょう。父の有り様を見ていた私は王子様が出てくる童話を見てもまるで楽しいとは思えませんでした。
私は直接令嬢様から嫌がらせを受けたことはありません。ただ、ゴミを見るような目で見られるのは苦痛なので、次第に私は母屋を離れて屋敷の離れに寄り付くようになりました。そちらの方が居心地が良かったからです。
離れには妹と妹母が住んでいます。専属のメイドや護衛がついている私とは異なり、彼女たちは侘しく二人で暮らしています。最近はよく彼女たちの家に顔を出すようにしています。
誰が噂したのか知りませんが、どうやら世間の噂では彼女らは意地悪な母娘で通っており、私の父を騙し子を作り、前妻の子である私を虐待しているとのこと。実際は抵抗する妹の母を手込めにしたのに、そのことは全く知られていません。なまじ父は外面が良く、面もいけてることから叩かれるのは妹の母です。
そんな経緯がありますが、私と妹の母はとても仲が良いです。私が小さかった頃はよく怒鳴られたり酒瓶を投げられたりしましたが、どれも威嚇目的で一度も怪我をさせられたことはありませんでした。よしよしと頭を撫でているうちにすっかりとなつかれました。
そんな私と妹母の目下の悩みは妹が引きこもりなことです。食っては寝てばっかりの堕落した生活。憐れでなりません。
私は彼女を救いたい。それが私のライフワークになったのでした。